Fluid Dynamics in Earth and Planetary Sciences (FDEPS)  Second FDEPS Workshop  Dec 04 - Dec 08, 2000  Graduate School of Mathematical Sciences, University of Tokyo


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講演
コア・マントル間熱的相互作用
吉田茂生(名古屋大学理学研究科)

要旨

地球のコアでどのような流れがあるのかを知ることは、地球内部の活動を知る 上で重要であるが、直接観測できないために未だ漠然とした知見しかない。地 球のコアで、どのような流れがあるかということに関して、最大の手がかりは、 磁場である。コアでは、液体の鉄が流動し、磁場が作られているからである。 しかし、その磁場も、観測できるのはコアの表面での分布に限られるために、 十分な情報が得られるわけではない。そこで、マントルとの関連において、コ アの中の流れを理解しようという考えがでてくることになる。マントルでは、 地震波のトモグラフィの結果が、マントル対流に関する情報を与えてくれてい る。マントルはコアに熱的な影響を与えているはずだから、それを手がかりに コアの流れを知ろうというのが、私の研究の考え方である。

磁場の観測を見ると、長期にわたって定常的な磁場成分がありそうだという見 方がある。これは、マントルの影響を示しているのだと考えられる。もし、マ ントルの影響がなければ、磁場のパターンは東西方向にドリフトするのが自然 だからであり、ドリフトしない成分があれば、マントルが止めていると考える べきである。また、そのような定常的な成分と、マントル対流の情報とを組み 合わせることで、コアの中の流れに関する情報を推定できると考えられる。

ところが、マントルがコアに与える熱的影響を調べるための基礎的な理論が 実はまだ充分に存在しない。それで、それを組み立てるというのが、私がやって いる仕事である。とりあえず線形論を組みたてることを現在は行なっている。 そういうわけで、この講演では、コア・マントル境界に熱的な不均質があった 時、コアの中にどのような流れができるかという線形論を中心に紹介する。線 形論でも、まだ全貌がわかっているわけではなく、磁場なし、基本流なし、中 立安定、sectorial 温度分布の場合を中心に私の研究を紹介する。

線形論の解は、エクマン数が大きい場合と小さい場合とで、大きく異なる。 その境界は波数が2の場合、エクマン数が 1/100 程度である。エクマン数が 大きい場合は、非回転解からの摂動計算で理解ができ、エクマン数が小さい 場合は、温度風の解に、エクマン層、赤道の変形エクマン層、 スチュワートソン層を重ねたものとして理解できる。


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2000/12/01 更新 (by 林 祥介)