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方程式の無次元化

運動の水平方向の空間スケールを L, 鉛直方向の空間スケールを H, 時間ス ケールを T, 水平流速のスケールを U, 鉛直流速のスケールを W とする. 圧力に関しては平均密度 $\rho_0$ によって生じる圧力と, それからのずれとで スケールをわけて, それぞれ P0, P とする. これらを用いてそれぞれの変 数を無次元化すると次のようになる.

\begin{displaymath}\begin{array}{l}
(x,y) = L (x^*,y^*),\hskip10mm z = H z^*,\h...
..._0(z) + p'(x,y,z,t) = P_0 p_0^*(z) + P p^*(x,y,z,t)
\end{array}\end{displaymath}

これらを (5), (4) 式に代入する. ただし簡略化のため無次 元であることを表す * は除く.

 \begin{displaymath}
\begin{array}{l} \Ddsty{
\frac{U}{T}\DP{u}{t}
+ \frac{U^2...
...t)
+ \frac{A_V U}{H^2}\left(\DP[2]{u}{z}\right) }
\end{array}\end{displaymath} (6)


 \begin{displaymath}
\begin{array}{l} \Ddsty{
\frac{U}{T}\DP{v}{t}
+ \frac{U^2...
...t)
+ \frac{A_V U}{H^2}\left(\DP[2]{v}{z}\right) }
\end{array}\end{displaymath} (7)


 \begin{displaymath}
\begin{array}{l} \Ddsty{
\frac{W}{T}\DP{w}{t}
+ \frac{UW}...
...t)
+ \frac{A_V W}{H^2}\left(\DP[2]{w}{z}\right) }
\end{array}\end{displaymath} (8)


 \begin{displaymath}
\frac{U}{L}\left(\DP{u}{x} + \DP{v}{y}\right)
+ \frac{W}{H}\DP{w}{z} = 0
\end{displaymath} (9)

(9) 式において $W/H \gg U/L$ であるとすると, w は鉛直方向に一 定であることになる. もし w が有限な値を持っていた場合には, どこかの海 底付近において w を補うだけの水平収斂あるいは水平発散がなくてはならな いが, 条件より u,v の収斂・発散は無視できるくらい小さいため, w を補 うだけの収斂・発散が生じ得ない. したがってこの条件は棄却される. $W/H \ll
U/L$ の場合には, u が収斂(発散)していた場合には v が発散(収斂)してそ れを補えばよいので, 可能性のある条件である. また $W/H \sim U/L$ の場合に は, 3 方向において収斂・発散がバランスしていることを意味している. したがっ て,

\begin{displaymath}W \lesssim \frac{H}{L}U \equiv \delta U
\end{displaymath}

となる. ここで $\delta$ は鉛直スケールと水平スケールの比を表す無次元数で, 一般に大洋スケールの大循環を考える場合には 1 よりもはるかに小さい.

以後 $W = \delta U$ のバランスを考えて運動方程式 (6) 〜 (8) を見ることにする. (6) 〜 (8) 式の両辺を f0U でわると次のようになる.

 \begin{displaymath}
\begin{array}{l} \Ddsty{
\epsilon_T\DP{u}{t}
+ \epsilon\l...
...right)
+ \frac{E_V}{2}\left(\DP[2]{u}{z}\right) }
\end{array}\end{displaymath} (10)


 \begin{displaymath}
\begin{array}{l} \Ddsty{
\epsilon_T\DP{v}{t}
+ \epsilon\l...
...right)
+ \frac{E_V}{2}\left(\DP[2]{v}{z}\right) }
\end{array}\end{displaymath} (11)


 \begin{displaymath}
\begin{array}{l} \Ddsty{
\delta\epsilon_T\DP{w}{t}
+ \del...
...
+ \delta\frac{E_V}{2}\left(\DP[2]{w}{z}\right) }
\end{array}\end{displaymath} (12)

ここで

\begin{displaymath}\epsilon_T = \frac{1}{f_0 T}, \hskip10mm
\epsilon = \frac{U}...
...\frac{A_V}{f_0 H^2}, \hskip10mm
\beta = \frac{\beta_0 L}{f_0}
\end{displaymath}

となる.



Takashi Kagimoto
1998-09-03