%表題  2002年気象学会予稿
%
%履歴  2002/02/19 杉山耕一朗
%      2002/02/23 杉山耕一朗
%      2002/02/24 杉山耕一朗, 小高正嗣, 林祥介

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\begin{document}

\twocolumn[
   \begin{center}
    {\LARGE {\bf 木星型惑星大気の熱力学計算〜温度分布と静的安定度の分布}}

    \vspace{4mm}
    {\bf 
        $^*$杉山 耕一朗, 
	    小高 正嗣, 
	    倉本 圭, 
            林 祥介 (北大$\cdot$理)
     \vspace{2mm} }
  \end{center}
  ]


{\noindent \bf 1. はじめに}

凝結成分の存在する大気の対流構造を研究する際, 空気塊の断熱変化を仮定して
大気の温度分布と静的安定度の分布を見積もることは必須の手順である.  木星
型惑星においては複数の成分が凝縮に関与し, それに付随する潜熱の放出は複雑
な静的安定度をもった大気構造をもたらす可能性がある. まさに複数の成分が凝
縮するという理由によって, 大気の力学的構造を研究するために必要な熱力学的
な考察が十分に行われてこなかった.

我々の今までの研究によって, 木星大気における温度分布と静的安定度の分布
の元素存在度依存性が得られた. しかし低温での比熱のデータが不足していた為
に, 木星以外の外惑星大気の熱力学的考察を行うことができなかった. さらに
2 つの相に含まれる物質が全く同じ場合に大気の熱平衡状態を正確に計算するこ
とができていなかった. 

そこで本研究では, 物性データの収集と計算手法の見直しを行い, 木星型惑星大気
全てにおいて温度分布と静的安定度の分布の元素存在度依存性を調べることとする.


\vspace{1mm}
{\noindent \bf 2. 計算手法}

%ギブスの最小化法の概要
大気の熱平衡状態を計算する手法としてギブス自由エネルギー最小化法を採用す
る. この手法は温度と圧力を与えた時のギブス自由エネルギーの式を大気組成に
関する 2 次の関数に近似し, ギブス自由エネルギーを反復的に最小値に収束さ
せるものである. 大気の熱平衡状態はギブス自由エネルギーが最小化された状態
とする. この手法の利点は大気中で生じ得る化学反応を考慮せずに済み, さらに
大気組成を簡単に変更することのできる点にある(杉山ら 2001). 

%ギブスの最小化法の欠点
この手法の欠点は, 2 つの相に含まれる物質が全く同じ場合には適用できないこ
とである. 例えば 1 成分 2 相系の場合, 温度と圧力を与えた時のギブスの自由
エネルギーの式はそもそも組成に関する 1 次の関数なので上記の手法は使えな
い. この欠点を克服するために, 前もって化学ポテンシャルの値から存在し得る
相を判定することとした.

%物性データ
ギブス最小化法で必要とされる物性値は標準状態でのエントロピー及びギブス自
由エネルギー, そして温度の関数としての比熱である. H$_2$ 以外の化学種の 
100 K 以下の比熱はスプライン補間を用いた外挿により求める. 
全ての化学種は理想気体, 理想溶液の法則に従うと仮定する.



\vspace{1mm}
{\noindent \bf 3. 計算結果} 

%木星型惑星大気の力学的構造を研究するために必要とされる温度圧力分布と静的
%安定度の分布の元素存在度依存性の整理を行った. 元素存在度をパラメタとした
%のは, 木星型惑星表層の雲層の下の元素組成は未だ明らかにされていためである.

計算結果の一例として土星大気の静的安定度の分布の元素存在度依存性を示
す. 相変化する成分を含んだ空気塊を湿潤空気, 相変化する成分を除去した空気
塊を乾燥空気と呼ぶことにし, 対流層で期待される静的安定度を湿潤断熱温度勾
配と乾燥断熱温度勾配とのずれから評価する. 凝縮性元素の存在度は太陽系元素
存在度の 1 倍, 3 倍と変化させ, 非凝縮性元素の存在度は太陽系元素存在度と
同程度とした.  ボイジャーの観測結果に合うように基準圧力を $p = 1.2
\times 10^{5}$ Pa, 基準温度を $T = 143$ K とした.

静的安定度の 4 つのピークは下から順に H$_2$O-NH$_3$(aq), H$_2$O(s),
NH$_4$SH(s), NH$_3$(s) の凝結に伴うものである.  大気の成層に与える影響は 
H$_2$O-NH$_3$(aq) の凝縮に伴うものが最も大きい. しかしその値は O の存在量を太陽
系元素存在度の 3 倍とした時でも $1.4 \times 10^{-5}$ 程度であり, 地球の
静的安定度の 1/10 程度でしかない.

計算手法の見直しの結果, 例えば H$_2$O-NH$_3$(aq) から H$_2$O(s) への相変
化をなめらかに表現することが可能となった.


\bigskip

\begin{figure}[hbt]
\begin{center}
   \Depsf[70mm]{./images/saturn_x1_x3.eps}
\end{center}
\vspace{-5mm}
\caption{{\small 凝縮性元素(O, N, S, C)の元素存在度を太陽系元素存在度の 
1 倍(実線), 3 倍(破線)した時の土星大気の静的安定度の分布. }} \Dfiglab{fig:1}
\end{figure}


{\noindent \bf 4. 参考文献}

{\small 
  杉山ら 2001: 木星型惑星大気の熱力学計算, 気象学会春季大会, P308
}
\end{document}




