GFD オンラインセミナー (第 1 回) 日時: 2020 年 10 月 13 日 (火) 16:30 - 18:00 講演者: 竹広 真一 (京大数理研) 講演タイトル: 「恒星熱対流の臨界状態と平均流生成について」 講演要旨: 最近の恒星対流のパラメター数値実験(Brun et al. 2017)によると, 反太陽(anit-solar)状態と呼ばれる, 恒星表面の赤道で遅く極で速く 回転している大気状態が, とあるパラメターにおいて存在することが 示された. この状態がそもそも対流の発生時から生じるのか, それとも 対流が発達した後の非線形相互作用によるものなのかを吟味するために, 我々は恒星対流の臨界状態と生成される帯状平均流を線形安定性計算と 弱非線形計算を行った. 恒星対流モデルは, 非弾性近似を施した回転球殻内の理想気体に, 乱流過程を模したエントロピー拡散に加えて放射過程を模した 温度拡散を導入し, 対流層だけでなく深部放射層まで同時に取り扱う ものである. 恒星質量を太陽質量の 0.5 倍から 1.1 倍, 回転角速度を 太陽の値の 0.5 倍から 5 倍の範囲で変化させたところ, 対流層内の 流体運動がロスビー波として順行方向に伝播するとともに, 放射層の 深部に向かって内部重力波が貫入する臨界構造が得られた. これらの 臨界状態によリ引き起こされる帯状平均流を計算したところ, すべての 場合において反太陽状態は見出されなかった. したがって反太陽状態は 有限振幅対流の非線形相互作用によリ引き起こされるものと考えられる. 参考文献: * Brun et al., 2017: Astrophys. J., 836, 192. * Takehiro et al., 2020: Astrophys. J., 893, 83.