自然を相手に観測などする場合, 
観測機器の不調等により正常にデータが取れない場合がある. 
そのような場合, 本来データを書くべきところに, 
特定のある数値 (例えば999.) を書いて, 
正常にデータが取れていないことを示すことがある. 
この「正常なデータでない」ことを意味する数値が欠損値である. 
DCLの多くのパッケージでは, 
このような欠損値を含むデータを直接扱うことができる. 
 
 
 
例えば, 次のようなデータがあったとしよう.
 
 
 
| 日最高気温の月平均値 | |||||||
| 月  観測点 | 札幌 | 仙台 | 東京 | 名古屋 | 京都 | 福岡 | 鹿児島 | 
| 1月 | -1.1 | 5.0 | 9.5 | 8.4 | 999. | 9.3 | 12.2 | 
| 7月 | 24.8 | 25.6 | 28.8 | 999. | 999. | 30.6 | 31.4 | 
 
 
 
1月の京都, 7月の名古屋, 京都の 999. は 
データが正常に得られなかったことを示している. 
1月, 7月それぞれの月のデータを配列T1, T7に読み込んで 
平均値を算出するとき, 
999. まで有効なデータとして扱ってしまうと, 
とんでもない値が算出されてしまう. 
そこで, 以下のように 
DclGetParm/DclGetParmが管理する内部変数
'INTERPRET_MISSING_VALUE'を 
.TRUE.として(初期値は.FALSE.) 
関数DclGetAVEを用いれば, 
999. を除いた平均値が算出できる. 
      call DclSetParm('INTERPRET_MISSING_VALUE', .true.)
      tave1 = DclGetAVE(t1)
      tave7 = DclGetAVE(t7)
欠損値処理をおこなうことができる関数では, すべての配列要素が欠損値のときは欠損値が返される.
なお, 配列T1とT7の和をTXとして求めるときは,
      call DclGetParm('MISSING_REAL', RMISS)
      where(T1 == RMISS .or. T7 == RMISS)
          TX=RMISS
      elsewhere
          TX=T1+T7
      end where
としてやればよい. T1およびT7の配列要素の少なくとも どちらかが欠損値ならば欠損値を返すので, この場合, 名古屋, 京都に対応するTXの配列要素は 欠損値となる.
 
 
欠損値は
DclGetParm/DclGetParmが管理する内部変数
'MISSING_REAL'(実数型の場合)/'MISSING_INT'(整数型の場合)
で指定され, 初期値は 999. および 999 である. 
999. という値は, 気温としては本来ありえない値なので, 
気温データなどの場合には問題はないが, 
この値がデータの範囲に入ってしまうような場合には, 
'MISSING_REAL'の値を変更しておく必要がある.