タイタンの成層圏では超回転状態であることが観測されている。また、分厚い ヘイズ層の存在もわかっており、大気上部の温度を上昇させ、大気の構造に大 きな影響を与えている。しかし、ヘイズ層が大気力学に与える影響はまだ十分 な理解がなされていない。本研究では、ヘイズ層が生み出すタイタンの特徴的 な温度構造と超回転との関係を理解することを目的として、3次元GCMを用いた 数値計算を行った。放射過程は、温室効果とヘイズの反温室効果を考慮した McKay et al.(1999) の灰色大気モデルを採用した。放射場と大気循環の影響に 着目するため、季節変化やメタンの凝結は考慮していない。タイタンの実際の 温度構造を再現する放射パラメータを用いて計算した結果、1000Paより上空で 全球規模で東向きの風が得られた。また、上空で放射が吸収されない場合、高 速の東向きの風は得られなかった。これは、ヘイズ層で放射が吸収される場合 には成層圏下部で赤道から極へまたがる循環が発達し、その上部で波により高 緯度側から赤道側への運動量が輸送されるためと考えられる。その波の特性に ついては解析中である。