/地球流体セミナー /講演資料一覧 /2004-09-13/

南半球成層圏に見られる年々変動

日尾 泰子(京大・理)
2004 年 9 月 14 日
講演ビデオを見るには, 以下の各スライド画像をクリックし, 左上に表示される「ビデオ開始」をクリックしてください.
タイトルぺージ


データ
  • 2002 年までの 24 年間のデータを利用する


季節進行の年々変動と 2002 年の共通性および特異性について


南半球成層圏
  • 2002 年の突然昇温イベントで注目を集めた


南半球成層圏の特徴


半球間の成層圏循環の違い (1)
  • 白い線が 15 年平均値
  • ハッチは変動幅? その割には実線がハッチからはみ出す理由は?
  • オゾンホールの影響は小さいと考えられている
    • PSC: 極成層雲
    • PSC の表面でオゾン破壊反応
    • 南極の方が PSC の生成条件が満たされている


半球間の成層圏循環の違い (2)
  • 両極の違いは Planetary 波の違いとして認識されている
  • どのくらいのフラックスでどのくらい加速するか? 数字の常識は?
    • 突然昇温: 10 日間で 50 m/s の減速.
    • だいたい 10^-5 m/s の減速
    • 成層圏のブリューワドブソン循環 v^bar = 1 cm/s


2002 年の突然昇温
  • 東に回転し 2 つに分割
  • 東進する波数 2 が現れた


極低温・プラネタリー波の特徴
  • 赤: 2002 年
  • 大昇温の前に何度か小昇温
  • 1988 年等, 突然昇温した年以外でも変化が見られる
    • 振幅の変化の図に注目
  • 例年は振幅がダブルピークになっていて, それなりに振幅の大きい年もある. なんで昇温は生じないのか?
    • 5, 6 月ではジェットの軸が低緯度に存在. ジェットの強度も弱い
本研究では季節変化の年々変化を見ていく


東西平均東西風の季節進行の年々振動
  • 東西平均風の平均と比べて 2002 年と比較
  • シェードした領域は 1 standard deviation
  • EOF 解析
    • EOF1: 正だと 8, 9, 10 月の減速を意味する
    • EOF1 と EOF2 の比が 6 倍くらい違うので, EOF1 の寄与が卓越すると言える
    • EOF2 は気候値より少し風速が大きい状態が続く(右図)
  • 晩冬での減速が特徴的


主成分スコアの変動
  • 1988, 2002 年のずれが特徴的
  • 単位は standard deviation. 1 sigma = およそ 10 m/s
  • ED: early decay(早く減速した年)
  • LD: late decay (遅く減速した年)


東西平均東西風およびプラネタリー波の振幅
  • 黒実線(シェード付き): ED (早く減速した年)
  • 破線(縦線付き): LD (遅く減速した年)
  • シェード: 0.5 deviation
  • 実線: 2002 年
  • 点線: 1998 年
  • 2002 年の振幅は LD 年の振幅と反対


東西風および振幅の違い


ED 年と LD 年の違いおよび 2002 年の特徴


下部成層圏 EP フラックス
  • 子午面循環の強度の指標
  • T^bar の大きさと Fz の積分に良い相関がある(Newman)
    --> この研究では u^bar と Fz の積分の相関を調べる


Fz と成層圏循環との関係


相関マップ
  • E-P フラックスの注入が早ければ
  • 正: 青 --> 季節進行が早い
    • E-P フラックスの意味からすると何で進行が早くなるのかな?
  • 負: 赤 --> 平年に比べて波が壊れる
  • 正の相関 --> Fz がたくさん入ってくると西風が強い
  • コンター: 季節変動を示している
  • 季節が進むにつれて polar Jet が極へ移動, ジェットの核が下がる


散布図
  • コリレーションの散布図
  • 2002 年は U と Fz の関係は例年の傾向を満たしているが, 値は大きく外れている
  • 予想される 1-sigma のパーセンテージと 2002 年の値は外れている


信頼楕円


Taguchi and Yoden 2002


結論
  • 2002 年は季節振動が早かった
  • 他の年よりも早く Fz が大きくなった理由はよくわからない


タイトル
  • 極渦の弱非線形的な運動


2002 年に見られた振幅の周期的変動
  • 波数 1 が周期的に大きくなっている
  • 波数 2 もおおよそ周期的
--> 本研究では波と波の相互作用があるのか調べてみる


過去の研究
  • 波数 1 の位相と波数 2 の位相が重なる時に波数 1 の振幅が大きくなっている
  • 波数 1 の波の特徴
    • 山等, 対流圏が励起源
  • 波数 2 の波の特徴
    • 東進波が卓越
    • ジェットの不安定性から生成(Manney, 1988)


波--波相互作用とは
  • k1 + k2 = k3, Ω1 + Ω2 = Ω3 の関係を満たしているか調べる
    --> 関係を満たしているならば相互作用しているとみなせる
  • 波数 0 のないようなシステムを考えている


事例解析
  • 60 S を最大にするような風速分布
  • QG-PV は 40S--50S でフラットな構造


極渦の時間変化
  • 東に回りながら周期 7 日くらいで「ぶよぶよ」膨らむ(左)
  • 定在波と非定在波(右)
  • 定在波
    • 波数 1, 2 とも東進
    • 振幅も周期的に変動


空間構造
  • 定在波数 1: 位相が高さと共に西に傾く 
    --> 対流圏が励起源
  • 東進波数 2: はじめつっ立って, 東に傾く
  • 東進波数 1: 100 mb くらいまでつっ立った構造
  • コンター間隔はそれぞれの絵で同じでない


非定在波のホフメラー図
  • 相対渦度の波数 1 の緯度毎の構造
  • 定在波 1 のリッジの位置を把握しておく --> 次頁の複素振幅の議論へ


1996 年の複素振幅の変化
  • 重心の位置が定在波の振幅を表す. 重心からのベクトルが非定在波の振幅を意味する.
  • 1 周して 180 度
  • 65S での速度 U をプロット(d). 速度の振幅が大きくなった日にちを緑で, 速度の振幅が小さくなった日にちを赤であらわす.
  • 空間構造(028.png)の定在波数 1 の絵で, 振幅が最大となる位相(振動の節)を緑線としてプロット
  • 65S での定在波数 1 の最大振幅となる位相を緑線を引く
    --> 緑線と重なる日付は in phase (位相が合わさる)
    --> 緑線と重ならない日付は out of phase


東西平均風の周期変化はなぜ起きる
  • E-P フラックス(divF)のプロット
  • 波数 1 の構造が卓越することがわかる(d)
  • divF と U で位相がずれる(e)


年々変動
  • 東進波の大きな年 8 例を抜き出す


東進波が大きな 8 年の波の時間変化
  • 東進波の大きな年 8 例について波と波の相互作用を調べる.
  • 相互作用しているそうです


波--波相互作用が観測されている年の特徴


2002 年 8--9 月に同じことが起こっていた?
  • 赤色の数字の塊と緑色の数字の塊の位置を見る


2002 年はなぜ早い時期に観測された?


まとめ


参考文献
  • Plumb, R. A., 2002: Stratospheric transport. J. Meteor. Soc. Japan, 80, 793--809.
  • Randel, W. J., and P. A. Newman, 1998: The stratosphere in the Southern Hemisphere. In Meteorology of the Southern Hemisphere edited by D. J. Karoly and D. G. Vincent. Meteor Monographs, 27, 243--282.
  • Kuroda, Y., Kodera, K., 1998: Interannual variability in the troposphere and stratosphere of the southern hemisphere winter. J. Geophys. Res., 103, 13787--13799.
  • Fusco, A., Salby, M.L., 1999: Interannual variations of total ozone and their relationship to variations of planetary wave activity. J. Climate, 12, 1619--1629.
  • Newman, P., E. Nash, and J. Rosenfield, 2001: What controls the temperature of the Arctic sratospherer during the spring? J. Geophys. Res., 106, 19999--20010.
  • Randel, W. J., Wu, F., Stlarski, R., 2002: Changes in column ozone correlated with the stratospheric EP flux. J. Meteor. Soc. Japan, 80, 849--862.
  • Taguchi, M., Yoden, S., 2002: Internal intraseasonal and interannual variations of the troposphere-stratosphere coupled system in a simple global circulation model. Part II: Millennium integrations. J. Atmos. Sci., 59, 3037--3050.
  • Scaife, A.A., Jackson, D.R., Swinbank, R., Batchart, N., Thornton, H.E., Keil, M., Henderson, L., 2004: Stratospheric vacillations and the major warming over Antarctica in 2002. J. Atmos. Sci., (submitted).
  • Manney, G.L., Nathan, T.R., Stanford, J.L., 1988: Barotropic stability of realistic stratospheric jets. J. Atmos. Sci., 45, 2545--2555.
  • Hirota, I., Kuroi, K., Shiotani, M., 1990: Midwinter warmings in the southern hemisphere stratosphere in 1988., Quart. J. Roy. Meteor. Soc., 116, 929--941.
  • Ushimaru, S., Tanaka, H., 1992: Anumerical study of the interaction between stationary Rossby waves and eastward-traveling waves in the southern hemisphere stratosphere., J. Atmos. Sci., 42, 1354--1373.
  • Hirooka, T., 1986: Influence of normal mode Rossby waves on the mean field: Interference with quasi-stationarywaves. J. Atmos. Sci., 43, 2088--2097.
  • Salby, M., Garcia, R., 1987: Vacillations induced by interference of stationary and traveling planetary waves. J. Atmos. Sci., 44, 2679--2711.


SUGIYAMA Ko-ichiro 2004-09-22