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CO2による散乱温室効果

横畠 徳太(北大・地球惑星)
2002 年 8 月 27 日
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図は Carr (1996) Figure 4-10 より引用 はじめに: 過去の気候変動の証拠


図は Kasting (1991) Figure 7 より引用 Kasting (1991) の計算結果
太陽定数が小さい場合の解のふるまいについて: S/S0 = 0.7 を例
  • 大気圧が増大すると大気構造が CO2 の飽和蒸気圧曲線に一致
  • 地表気圧と地表気温は飽和蒸気圧曲線(図点線)上のある一点に「飛ぶ」.
  • S/S0 = 0.8 の場合も同様.


CO2 による散乱温室効果の概念図


図は Pierrehumbert and Erlick (1998) Figure 1 より引用 Pierrehumbert and Erlick (1998): CO2 による散乱温室効果を最初に計算.

雲の吸収による効果を考慮していない.



図は Forget and Pierrehumbert (1997) Figure 2 より引用 Forget and Pierrehumbert (1997):
雲層の高度をどこにとるかが重要
  • 大気の光学的厚さが小さい場合には, 散乱される赤外放射の大部分は地表から射出されたものなので あまり問題はない
  • 大気の光学的厚さが大きい場合には問題になる.
  • Forget and Pierrehumbert (1997) では 0.1 hPa 面高度に置いた.


今回の目的


放射モデルの概要


CO2 氷の複素屈折率


複素屈折率から計算した CO2 氷雲の光学定数
  • 1 次散乱アルベドはほとんど 1 に近い.
  • 吸収はごく一部の波長帯でのみ存在.


CO2 氷雲による反射吸収率


CO2 氷雲におけるエネルギーバランス:
加熱因子 (warming factor) を導入.
  • 雲層の上下でエネルギーの釣り合いを考える.


加熱因子の雲層厚に対する依存性
  • 層厚の大きい場合には雲は冷却に働く.
  • 原因はいわゆる「日傘効果」: 太陽放射に対し少しでも吸収があると, 多重散乱の結果透過光はほとんどなくなる.


雲層の厚さをおおざっぱに見積もってみる: 基本的な考え方


雲層の厚さをおおざっぱに見積もってみる: 詳細


存在可能な雲層の厚さ
  • 横軸は最初に与えた雲層の厚さ
  • 色付き線は潜熱から見積もった雲層の厚さ
  • 破線と色付き線との交点が存在可能な雲層の厚さ


存在可能な雲層の厚さを緯度ごとに見積もってみる
  • 入射太陽放射フラックスのみ緯度依存性を考慮
  • 大気構造, 雲層存在高度は同じ


まとめ


参考文献
  • Carr, M. H., 1996: Water on Mars. Oxford University Press.
  • Forget F. and R. T. Pierrehumbert 1997: Warming early Mars with carbon dioxide clouds that scatter infrared radiation. Science, 278, 1273-1276.
  • Kasting, J. F., 1991: CO2 condensation and the climate of early Mars. Icarus, 94, 1-13.
  • Pierrehumbert, R. T. and C. Erlick 1998: On the scattering greenhouse effect of CO2 ice clouds. J. Atmos. Sci., 55, 1897-1903.
  • Warren S. G., 1986: Optical constants of carbon dioxide ice. Applied Optics, 25, 2650-2674.


Odaka Masatsugu, Sasaki Youhei & SUGIYAMA Ko-ichiro 2002-09-26