Fluid Dynamics in Earth and Planetary Sciences (FDEPS)  Second FDEPS Workshop  Dec 04 - Dec 08, 2000  Graduate School of Mathematical Sciences, University of Tokyo


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講演
8 月に日本上空にできる等価順圧構造を持つ亜熱帯高気圧の成因
榎本剛(東京大学理学研究科)

要旨

北半球の夏季、対流圏上部に現れるチベット高気圧は、大気の流れの場に東西非一様 性をもたらす。東西方向に惑星規模のスケールを持つチベット高気圧の中に、総観規 模程度のスケールの準定常的な偏差が見られる。特に、8月、日本上空には、小笠原 高気圧が発達する。この高気圧の鉛直構造は、太平洋高気圧のものとは異なっている。 太平洋高気圧は地表付近で最も強く、対流圏中層から上層にかけては低気圧となって いる。これに対し、小笠原高気圧は深い構造をしている。小笠原高気圧は対流圏上層 から下層まで伸びており、地表に達することもある。暑い夏をもたらすこの高気圧は、 梅雨期には見られない。このような等価順圧構造(鉛直方向に位相のずれのない構造) は以前から知られていたが、その原因を十分に説明する理論は存在していない。我々 は、簡単な大気大循環モデルを用いて、さまざまな熱源や渦度強制を与えた実験を数 多く行ない、小笠原高気圧の形成と維持について調べた。数値実験の結果、小笠原高 気圧は亜熱帯の熱源と中緯度のジェットの相互作用の結果生じたものであることが分 かった。まず、亜熱帯の熱源に対する第一次応答として、北西側に下降流域ができる。 下降流域は、断熱的及び非断熱的過程により局在化する。下降流は、ジェット上にあ るために、効果的に波を励起する。このようにして、熱源に対する第二次応答として 定常ロスビー波がジェットの入口付近で励起される。ロスビー波の鉛直構造は、下流 に伝播するにつれて順圧的になる。我々が「シルクロード・パターン」と呼ぶジェッ トに沿った波の伝播は、日本上空に等価順圧構造を持つ高気圧を作ることになる。た だし、シルクロードパターンは、チベット高気圧がもたらす東西非一様性に影響を受 ける。我々は、以上を日本上空に形成される等価順圧構造をもつ高気圧をもたらすメ カニズムとして新たに提案する。 (共同研究者, 松田佳久(東大理)、 B. J. Hoskins (Reading U., U.K.) )


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2000/12/01 更新 (by 林 祥介)