火星現象論: 火星の極冠

地球流体電脳倶楽部

1996 年 5 月 24 日

目次

• 成分, 温度
• 形状
• 参考文献

概要:

火星の極冠を概観する.

成分, 温度

バイキングなどの観測から, 極冠の成分, 温度は 次のようになっていることがわかっている.

		北半球の極冠	南半球の極冠
成分	夏	${\rm H}_2{\rm O}$のみ	${\rm CO}_2$
	冬	${\rm CO}_2$と ${\rm H}_2{\rm O}$	${\rm CO}_2$
表面温度	夏	205K	150K
	冬	150K	150K

表1からわかるように夏の南半球の極冠の温度よりも 夏の北半球の極冠の温度の方が高くなっている. ところが, 南半球の夏には北半球の夏よりも火星は太陽に近い. (火星の近日点は $L_s=205^{\circ}$の時（南半球の夏至の少し前）であるから. ) このように火星の極冠について不思議なことがある. 以上の点も含め, 火星の極冠については次のようなことが考えられている.

• 北半球の夏には極冠の成分はH$_2$Oだけになる. 205Kという温度ではCO$_2$が全て昇華して, 大気に出てしまうためである.
• 上に述べた不思議なこと(夏の南極冠の方が夏の北極冠より温度が低いこと) に対して森山(1981)は夏の南半球には大気中にダストが多く存在していて ダストによる遮蔽効果が効いているためと考ている.
• 南半球の極冠では常にH$_2$Oの凝固点以下なのでCO$_2$の下に H$_2$Oが埋まっていると考える人もいる.

(森山(1981))

形状

良くわかっていない.

参考文献

森山 茂, 1981 : 気象学のプロムナード1, 大気の歴史, 東京堂出版.

謝辞

本稿は 1989 年から 1993 年に東京大学地球惑星物理学科で行われていた, 流体理論セミナーでのセミナーノートがもとになっている. 原作版は石渡正樹による「火星現象論」 (1989/05/19) であり, 林祥介によって地球流体電脳倶楽部版「火星現象論」 として書き直された (1996/06/23). 構成とデバッグに協力してくれたセミナー参加者のすべてにも 感謝しなければならない.

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