天文台ミーティング (2020-12-20 〜 22)

スケジュール・参加者

  • dcmodel プロジェクト研究会: 惑星大気モデル群およびそのためのソフトウェアの現状確認と今後の展望
  • 日時: 12月20日(月)-12月22日(水)
  • 場所: 国立天文台三鷹

    12月20日(月)  終日 院生セミナー室(すばる棟,W1)
    12月21日(火)  終日 院生セミナー室(すばる棟)
    12月22日(水) -1600 院生セミナー室(すばる棟)
                  1600- 大セミナー室(すばる棟)
  • 参加者: 林, はしもとじょーじ, 石渡, 竹広, 倉本, 高橋芳幸, 西澤誠也, 中島健介, 佐々木洋平, 杉山耕一朗, 保坂, 川合, 室井, 納多哲史, 山下
  • 予定: 12/20(月)

    10:00-10:30  趣旨説明・モデル開発計画案 (石渡)
    10:30-12:00  必要に応じて各資源の現状サマリー, 
                 計画案に関する議論, 
                 気象庁グループとの議論のポイントの確認・整理
    12:00-14:00  昼休み
    14:00-16:00  金星の雲物理過程について (はしもと)
    16:00-19:00  モデルの将来像について

    12/21(火)

    10:00-11:30  各人の計算の現状報告
                 納多,山下,馬場,今関,島津+α
    11:30-13:30  昼休み
    13:30-16:00  気象庁モデルの雲スキームについて (川合)
    16:00-17:00  気象庁モデルの陸面過程スキームについて (保坂)
    18:00-       夕食

    12/22(水)

    10:00-12:00  これまでの議論を踏まえて, 開発計画案のデバッグ
    12:00-14:00  昼休み
    14:00-17:00  短期的な目標, 長期的な目標の設定, 
                 今後のタイムスケジュールに関する検討

我々のモデルのイメージに関する議論

  • 当面の射程範囲として考えるのは, 地球, 金星, 火星を 含むパラメータスタディをするためのモデルの作ること.
    • dry atmosphere のパラメータスタディなどをちゃんとやる という類のことを目指すのであれば grey 放射でも良いのでは ないか (はしもと)
  • 将来的に探査のことを考えれば, 特定の惑星に特化したモデルもいずれ必要.
  • ある程度 realistic であるが, GFD 的な考察をおこなう
「おもちゃ」モデルであるべき.
 イメージとしては 
 * Manabe さん的な難しいところには踏みこまないモデル
 * 10 年前の CCSR モデル
   * AGCM5.4g
   * バケツ, アルベド場所によって変わる.
   * 雲の落下とか入っていたと思う (はしもと)
  • 当面(ここ2 年程度?)の開発目標: dcpam, deepconv/arare ともに
「現在の地球・火星・金星計算」のためのポリッシュアップ.

deepconv/arare

現状

2 次元木星, 主成分凝結対流, 地球(水蒸気の雲の)対流

3 次元計算のための足回りのモジュールは存在

多成分の凝結
放射は一様冷却・一様加熱
雲物理: Kessler と雲粒の拡散成長
ice phase 無し
基本場は外から与えることができるようになった.
surface flux を入れることができるようになった.

地形は入れられない.  

格子間隔は等間隔のみ.

計算効率が悪い?

実装仕事のリスト・順番

  • 3 次元化, 不等間隔鉛直格子への対応, コードの整理
    • 計算効率が悪い理由の調査
  • 雲物理の「増強」
    • 拡散成長(主成分凝結対流計算)でできる雲粒の落下
    • 地球の雲の ice phase
    • 金星の雲粒子の化学反応
  • ダスト
    • ダストの巻き上げ, ダストの落下
  • 放射 dcpam で使っている放射スキームを組み込む.
  • 地形の導入
  • 完全圧縮への移行

計算ターゲット, チェックポイント

  • 外惑星計算: 木星の 3 次元計算, 更に土星, 天王星, 海王星
  • 金星計算のターゲット: 金星の地表から雲層までの計算
  • 地球計算のチェックポイント: 熱帯のスコールラインの計算
  • 火星計算のチェックポイント: 小高計算

dcpam

現状

  • dcpam 放射コードの現状
    • AGCM5.3 の「バンド」モデルは実装されている.
    • Chou et al. (2001)などの方法に基づくものに 再構成中
      • 地球の計算 長波9 バンド CO2, H2O は k-分布法 O3 : look-up table を持っている.

        短波 11 バンド, delta-Eddington

      • 火星の計算 15 ミクロン帯だけ F の計算方法がちょっと違う.
    • 地球成層圏の温度は大幅に改善
    • 雲量を決める方法が雑
  • 放射スキームは, 現在は 地球放射を計算するサブルーチン, 火星放射を計算する サブルーチンという形で作られている. 将来的には地球も火星の放射も一般化して「同じサブルーチン」で 計算するようにしたいが, この 1, 2 年では....
  • 放射計算スキーム
    • 散乱無し
      • 透過率の計算方法
        • バンドモデル
        • k-分布法
        • lool-up table を使用する
    • 散乱あり
      • 散乱・吸収:
        • k 分布法
        • 一次散乱アルベドの計算
      • 二方向近似
        • Eddington 近似
        • 一様
      • 多方向近似 (discrete ordinate)
        • doubling adding
  • 放射計算の「最少単位」は散乱無し灰色と散乱有りの灰色. あとはこれをいかにくっつけるか, という形で一般化できるはず?

今後の開発に向けてのメモ

  • dcpam 放射スキームの再構成
    • テスト計算: 地球用放射スキーム, 火星用放射スキームを 使った計算. 東西平均場などの図を書く.
      • 現在の dcpam で実装されている雲水を決めるルーチンを使用.
    • テスト計算やりつつ, 放射スキームの統一の仕方を検討する. 再構成が進めば, 地球用パラメータセット, 火星用パラメータセット, 金星用パラメータセット (高木さんからもらう, いつになるかは不明) を使ったテスト計算の実行.
  • dcpam における雲スキーム
    • 雲水の予報式を入れる.

      \DP{M}{t} = - \Ddiv (\Dvect{v} M)
              + P - L
      P= \tau P', L=-M/\tau 

      この形で作っておけば, 更なる精緻化もやりやすい.

気象庁のモデルを「お手本」にすることに関して

  • 気象庁モデルを動かすには, 気象庁モデルを動かすことに専念する人を 作らないといけないだろう. 4 年生などの若い人.
  • ちゃんとした経営戦略を持つべし. CCSR がモデルを公開する, となったら, どうするか? 連携をとる相手としては, GFDL もあれば, Reading のグループもある. 経営戦略としてどことつながっているべきかをことあるごとに検討するべき.

金星の雲の化学反応(はしもと・今村モデル)

金星の 65km (雲のちょっと上), 雲層は 50km 〜 65km 位
  CO2 ->  CO + O (UV でたたく)
  SO2 + O -> SO3
  SO3 + H2O -> H2SO4 (g) 
  H2SO4 (g) <->  H2SO4 (l) 
どれもそれなりに速い反応.
最後の反応でできる, H2SO4 の生成率を与えて, 雲の生成率を計算する.

SO2 も H2O も下から来る.

35km
  H2SO4 -> H2O + SO3
  SO3 + CO -> SO2 + CO2

地球の雲とはだいぶ違う.

鉛直方向に広がっている, 雲粒は小さいのでそれでバッと散乱される.

H2O と SO2 の鉛直gradient は 10 倍くらい違うという見積もりがある.
下で H20 30 ppm, SO2 は150ppm
上で H2O 1 ppm, SO2 1ppb 
S の固体ができて下に落ちているという話がある.

なので, 雲の量をちゃんと決める, というのは難しい.

UV は何が吸収しているのか? は open quesction.

金星の雲パターン

雲のパターンは convection で作られるという話がある.
Carlson et al., 1993: Planet Space Sci, 41, 477-485
これはパターンの水平スケールがだいぶ大きかった.

Tsang et al., 2010: GRL 37, L02202

探査機のデータを使って雲の立体視するようなことをすれば, 
対流モデルでもネタはあるかも.

難しいことを考えるためには, まずは鉛直勾配の差の問題を
解決するべき.

金星の計算をできるようにする, というのはモデルラインアップを
そろえるという意味しかないので, 対外的には金星をやる理由はない.
金星とは, 雲に覆われた大気

H2O のフラックスを与えてしまうモデルでも, 
polar vortex の付近で雲が無い領域があってそういのは出ますか?
とか, Tsang et al. (2010) の論文にあるような数百キロの
でこぼこはできますか?
という議論はできるのかもしれない.

川合さん

  • 気候モデル, 全球数値予報モデル 20km
  • 1999 年 12 月より前 RH が 100% を越えると凝結. 放射過程では, 相対湿度から雲量を決めて, 雲水量は独自に気温から診断する.
  • 1999 年 12 月から 雲水量を予報変数にした Arakawa and Schubert からデトレイメント量をもらう.
  • 雲水・雲氷の割合は温度の関数として与える.
  • 格子点の中で変動幅があると考える.

    乱流スキームで計算されるゆらぎを使うというのが, もとの Smith の論文 に書かれている. しかし, 全球モデルで計算される乱流スキームのゆらぎだと変動幅が ものすごく小さくなってしまった. 実際に効いているのは, 臨界相対湿度によるゆらぎの下限. 使っているのは 20% これだけだと熱帯の中層で雲ができない. 積雲対流のマスフラックスを使って, 積雲がたっているところは 幅を広げる, ということをしている.

    今 A-S スキームでは雲面積 0 ということを仮定した式を使っているけど A-S でも雲できることを考慮する必要があるかも, という議論がなさられている.

  • 雲水から降水への変換
  • coalesence 効果
  • 氷と水での蒸気圧の違い: Bergeron-Findeisen 効果
  • 雲粒の有効半径は Wyser (1998) の式で決める. これで放射収支が決まってしまうことになるので気候モデルで とっても重要.
  • 雲水・雲量は格子内の揺らぎ分布からペアで一意に決まる. Smith スキーム
  • 次の導入候補のスキーム Tiedtke スキーム 雲水, 雲量ともに予報式を使う.
  • 層状雲の生成 飽和比湿の変化率によって決める.
  • 雲氷の落下速度 600 sec で 300m 落ちる. 1 step で層から無くなってしまう, ということも 起こり得た.

    新スキームでは, 小さい粒と大きい粒で落下速度を変える.

  • 雲スキームで放射に必要なものは 雲水量, 雲氷量, 雲量
  • 粒径分布: 単一
  • スキーム選択の理由: ECMWF で使われており, 実績がある.

保坂さん

  • 89 年くらいまではバケツモデル, アルベドも prescribe だったけど, 気孔抵抗を気にするようになった
  • SVATS
  • 植生を特定するパラメータは 40 個くらい