%---------------------------------------------------------------------
%  流れ 1989
%  改変 豊田英司 1998

\documentstyle[12pt]{jarticle}

% 互換性のための追加マクロ
\newcommand{\SP}{}
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\newcommand{\Ed}{\end{description}}
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\newcommand{\Ba}[1]{\left(\begin{array}{#1}}
\newcommand{\Ea}{\end{array}\right)}
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\begin{document}
%\kanjiskip=1pt plus 1pt minus 1pt
%\setlength{\baselineskip}{18pt}

\hbox{ }
\vspace{1cm}
\begin{center}

{\Large エクマンらせん}\\
\vspace{0.5cm}

* 京都大学教養部 \footnote{* 〒606 京都市左京区吉田二本松町}
\SP 酒\SP 井 \SP 敏\\
\vspace{1cm}

{\Large Ekman spiral} \\
\vspace{0.5cm}
\begin{large}

Satoshi SAKAI \\
Department of Earth Sciences \\
College of Liberal Arts, Kyoto University \\
\end{large}
\end{center}
\vspace{1cm}


\begin{large}
\TITLE{ABSTRACT}
Ekman's theory of ocean current driven by wind is reviewed.
The theory is confirmed by a simple rotating tank experiment.
The visualized flow in the tank fairly fits to the theory.
The basic equation is also solved using the impulse response function
to answer some basic questions on the curious flow in the rotating fluid.
\end{large}

%------------------------ macro -------------------------------------
\newcommand{\ROTA}[1]{\Ba{cc} \cos(#1), &  \sin(#1) \\
                             -\sin(#1), &  \cos(#1) \Ea }
\newcommand{\Vtwo}[2]{\Ba{c} #1 \\ #2 \Ea}
\newcommand{\Atwo}[4]{\Ba{cc} #1, & #2 \\ #3, & #4 \Ea}
%--------------------------------------------------------------------

\section{はじめに}

水産庁の調査により, 
太平洋のほぼ中央部, ハワイの近くにゴミのたまり場があることがわかった, 
ということが1988年11月NHKのニュース番組で報道された$^{(1)}$. 
そのゴミの多くが日本から流れてきたものであるということで, 
南の島の砂浜に打ち上げられた100円ライターや, 
カタカナが印刷された清涼飲料水のガラス瓶など, 
おびただしい数のゴミが映し出された.
これを視ていて私は少々興奮した.
といっても別に
「とどまるところを知らない環境破壊に対する怒りがこみ上げてきた」
というわけではない. 
また「この事実が海洋物理学上の全く新しい発見である」
というわけでもないのである. 

実は, 太平洋高気圧に伴う風によって流された海面付近の水が,
地球の自転の影響を受けて太平洋の中心付近に集まることは,
理論的に予測されることであり, 
海洋物理学者にとっては「常識」と言ってもよい.
その理論とは, 1905年に発表されたEkmanの境界層に関する理論$^{(2)}$で, 
これなしには海洋物理学は成り立たないと言っても過言ではないほど基本的な理論である. 
にもかかわらず, この理論を直接実証するような観測事実はこれまでほとんど得られていない.
間接的な証拠はかなりあるものの, 
外洋の海面付近の直接測流は技術的に非常に難しいため,  
そのような観測はほとんど試みられていなかったのである. 
（ごく最近になって, 新しい測器を使ったいくつかの観測が試験的に行われている$^{(3,4,5)}$.）

従って, このゴミのニュースはEkmanの境界層理論を実証する
貴重な, そして非常にわかりやすい証拠なのである. 
そして, 間接的な証拠しかないことを
講義等で「まるで見てきたかの様に説明する」ことに
後ろめたさを感じていた私にとって, 
このニュースはまさに「渡りに船」であった. 
それにしても, 
我々から見れば決してありがたくないゴミによって, 
Ekman境界層の流れによる収束が見事に「可視化」されてしまったのは, 
何とも皮肉なことである. 

%----------------------------------------------------------------------

\section{Ekman境界層}
\label{theory}
水平方向に一様な海を考え, 
鉛直方向の渦粘性と地球の自転によるコリオリの力を考慮すると, 
ある深さにおける海水の水平方向の運動方程式は, 
\Beqs
\PD{u}{t} & = &   f v + \nu \PDD{u}{z} \label{eq1}\\
\PD{v}{t} & = & - f u + \nu \PDD{v}{z} \label{eq2}
\Eeqs
となる. 
ここで, $(u, v)$ は水平方向の流速, $f$ はコリオリパラメータ, 
$\nu$ は鉛直方向の渦粘性係数で, 深さ $z$ は下向きを正とする. 

ここで定常状態を仮定すると, 
上式は $z$ に関する2階連立常微分方程式となるので, 
容易に解けて, 一般解は

\Beqs
u & = & A \exp( z/D) \cos(z/D+\epsilon_1) 
      + B \exp(-z/D) \cos(z/D+\epsilon_2) \label{eq3}\\
v & = & A \exp( z/D) \sin(z/D+\epsilon_1) 
      - B \exp(-z/D) \sin(z/D+\epsilon_2) \label{eq4}\\
D & \equiv & \sqrt{\frac{2\nu}{f}} 
\Eeqs
となる. 
ここで $A$, $B$, $\epsilon_1$, $\epsilon_2$ は任意の実定数である. 

境界条件は, 
海面で風による応力が働いているものとし, 
深いところで流れはないことを仮定すると, 
\Beqs
\Vtwo{\Pd{u}{z}}{\Pd{v}{z}} & = & 
-\frac{1}{\rho\nu} \Vtwo{ F_x }{ F_y} \SP \mbox{at} \SP z=0 \\
\Vtwo{u}{v} & = & \Vtwo{0}{0} \SP \mbox{at} \SP z=\infty
\Eeqs
となる. 
ここで, $F_x$, $F_y$ は風により海面に加わる応力である. 
風による応力の方向は,
正確には風の速度と海面での海水の速度の差の方向であるが, 
通常海面での流速は風の速度に比べて小さいので, 
実質的には風の方向と同じと考えてもよい.

この条件を一般解(\ref{eq3}--\ref{eq4})に適用すると, 
\Beq
\Vtwo{u}{v} =  \frac{D}{\sqrt{2} \rho \nu} \exp(-z/D) \ROTA{z/D+\pi/4} 
               \Vtwo{F_x}{F_y} \label{spiral}
\Eeq
となる.
この解を図１に示す.
この流速ベクトルの終点を結んだものが\.ら\.せ\.ん状になることから, 
この流速分布のことをEkman\.ら\.せ\.んと呼ぶ. 
図１からもわかるように, 
表面での流速は風の向きから右に45\DEG 偏向しており,
深くなるにつれて偏角は右回りに大きくなっていく.
そして, 海面より少し深いところ($z=\frac{1}{2}\pi D$あたり)では, 
何と, 流れは風の向きと逆方向を向いているのである. 

さて, この理論を実際の太平洋に適用してみよう. 
太平洋上では太平洋高気圧に伴って, 時計回りの風が吹いている. 
この風によって海の水は流されるわけであるが, 
上のEkmanの理論によって, 
海面付近の水は風下より右45\DEG の方向に流される. 
つまり, 海面付近の水は時計回りに回りながら
中心付近に集まってくることになる. 
このように, (\ref{spiral})式を認めれば, 
日本から出たゴミがハワイ近海に流れ着くことは容易に想像できるのである. 

それにしても, このEkman\.ら\.せ\.んは奇妙だと, お思いにならないだろうか. 
確かに, 定常状態で方程式を解けば, このようになることはわかるのであるが, 
いくら式を解いてみても「割り切れないもの」を感じてしまう. 
すなわち, Ekman\.ら\.せ\.んの解を見ると, 
\begin{screen}
\Be
\item なぜ海面での流速は風向きと一致しないのか?
\item なぜ流向が深さとともに右回りに変化し, 
      風と逆向きにさえなり得るのか?
\Ee
\end{screen}\noindent
というような疑問がわいてくるのであるが, 
いくら元の方程式を眺めてみても
\Be
\item 境界条件は海面での流速を与えるものではなく, 
      応力を与えるものであるから, 
      流速がその向きに一致する必要はない. 
\item コリオリの力と粘性力のバランスを考えればそうなる. 
\Ee
という答えしか得られない. 
これでは上の疑問に答えることにならないであろう. 
ここでの「なぜ?」は単に方程式を解くことで答えられるものとは
異質なものを要求しているのである. 

私は学生時代に(\ref{eq1}--\ref{eq2})式の定常解を何度も解いては
首をかしげていたことを, 今でもはっきりと覚えている. 
「式は解けるのにわかった気がしない.」というのは, 
私にとって生まれてはじめての経験であった. 
それ以後, 海洋物理学を含む地球流体力学の世界に入った私は, 
同じような「割り切れないもの」を幾度となく経験することになるのであるが, 
今にして思えばEkman\.ら\.せ\.んの時の体験が, その最初のものであった. 

%----------------------------------------------------------------------

\section{Ekmanらせんの可視化実験}
理論を勉強しても納得できず, 
その理論を直接証明するような観測結果がほとんどないとなれば,
室内実験でもよいからそのEkman\.ら\.せ\.んを自分の目で見てみたくなるのが
人情というものである. 
ところが, Ekman\.ら\.せ\.んそのものを可視化した実験はこれまでにほとんどなく, 
たとえあっても, 境界条件として流速そのものを与える Bottom Ekman 層の実験
(大気の接地境界層に相当する)で, 
境界条件として応力を与えるものは皆無である. 
たしかに, Ekman層の理論が「常識」となってしまった現在では, 
その可視化実験をしたところで大した業績になるとは思えないので, 
いまさらそのような実験をしようとする人もいないのかもしれない. 
しかし, 見たいものは見たいのである. 
そこで, 
教養部の学生数人とともに Ekman \.ら\.せ\.んの可視化実験を試みた. 

この実験に使用した回転台は手持ちのもので,  
台の直径50cm, 回転数は5rpmから50rpmまで連続的に変えられる. 
ここでは, 実験のしやすさを考慮して
10rpm程度の回転数で実験をすることにする. 
この時, 
作業流体として水を使うと Ekman層の厚さ $D$ は1mm程度になってしまい,
可視化が困難であるので, 
グリセリンと水の混合液を使用することにした. 
グリセリンの動粘性係数は室温で10cm$^2$/s程度であるが, 
水を混ぜると急激に粘性が小さくなる. 
ここで使用した混合液はグリセリンが約80\%, 
動粘性係数は約0.6cm$^2$/sである. 
この時の, Ekman層の厚さ$D$は約8mmになる. 

使用した水槽は深さ10cm, 縦横30cmのアクリル製で, 
それ全体をアクリル製の透明なカバーで被って風を送る(図２).
この水槽の深さはEkman層の厚さを考慮したものであるが, 
水平方向の大きさは回転台の大きさから決めたもので, 
特に意味はない. 
境界層の流れは, 瞬間的に色水を水面から下向きに射出することで可視化する．色水は, 水酸化ナトリウムとフェノールフタレインで色を付けた水に, 
食塩を溶かして密度を調整したものである. 
この色水を注射器に入れ, 
あらかじめ電磁石で引き延ばしておいたバネの力を使って, 
内径0.8mmのパイプから射出する. 
この時, 射出された色水の先端は,
きのこ状の形になるが, 
その後ろ側は比較的きれいな直線となる. 

この実験の結果を写真1, 2に示す. 
写真１は色水を射出してから10秒程たった時の様子を, 
上から撮影したもので, 
写真２は鏡を使って横から撮影したものである. 
(同時に２方向から撮ったものではなく, 独立した実験である.)
写真の中の格子は1cm間隔で風洞の外側に描いてあり, 
写真２では視差があるので色水のあたりで約0.8cmの格子に相当する. 
これらの写真と図１を比べると, 
これらが非常によく一致していることがわかる. 
写真１では表面流速は風向きに対してちょうど45\DEG になっっており, 
\.ら\.せ\.んの形も図１とほとんど重なるくらいきれいな形になっている.
また写真２も\.ら\.せ\.んの形状, 層の厚さともにほぼ理論通りである. 
このことから, 
この程度の実験でも簡単にEkmanの理論を確かめることができる, 
と言いたいところであるが, 
実は一つ告白しておかなければならないことがある. 

実験をはじめてから気がついたのであるが, 
この実験では, 作業流体の表面が直接風にさらされているため, 
作業流体の水分が時間とともに蒸発してしまう. 
そして, 数分以上風を吹かせていると, 
表面に堅いグリセリンの「蓋」ができてしまい, 
風の力が流体に伝わらなくなってしまうのである. 
そのために, 色水を射出する前に充分なスピンアップができず, 
少々再現性に欠ける実験になってしまった. 
そして, 10数回実験を行った中で
最も理論値に近かったものをここに掲載した. 
残りの実験でも, 一見して似たような\.ら\.せ\.ん形にはなるのであるが, 
ここまで理論に一致するものはそう簡単には得られていない. 
従って, これらの写真は少々「出来すぎ」のきらいがあることを, 
ご承知おきいただきたい. 
また, 表面付近でグリセリン濃度が変わることにより屈折率も変わってしまうので, 
写真２のように横から見ると, \.ら\.せ\.んが光学的にゆがんでしまい, 
表面近く3mm程(格子の約1/3)はどこが見えているのかよくわからない. 
現在, これらの点を改善し, もう少し再現性のよい実験を計画中である. 

このように多少荒っぽい実験で不満は残るものの, 
一応 Ekmanの理論に近い境界層内の流れを可視化することが出来た. 
このような状況のもとで(\ref{spiral})式が成り立つことは, 
ほぼ間違いないようである. 
もちろん, 実験が出来たからと言って, 
その現象を物理的に理解できたと言うわけではなく, 
前述の疑問に答えられたと言うわけでもないが, 
何となく安心感が得られたような気はする. 


%----------------------------------------------------------------------

\section{Ekmanらせんの物理的解釈}
\label{phys}

ここでもう少し「なぜ?」にこだわってみよう. 

基礎方程式(\ref{eq1}--\ref{eq2})は
コリオリの力と粘性だけを考慮したものなので,  
$f=0$ としてコリオリの力を無視すれば, 
おなじみの拡散方程式, 
\Beq
\PD{u}{t}  =  \nu \PDD{u}{z} \label{dif}
\Eeq
となる. 
ここで$v$に関する式も, $u$の式と同様なので省略する. 
この系に$z=0$で, 風による外力$F_x(t)$が加わった時の解は, 
\Beqs
u & =&  \int_0^\infty I(\tau) F_x(t - \tau) d\tau \label{difs} \\
I(t) & \equiv & \frac{1}{\rho\sqrt{\pi \nu t}} 
                    \exp ( - \frac{z^2}{4\nu t}) \label{difi}
\Eeqs
と書ける. 
ここで, $I$ は単位インパルス応答関数で, 
ある瞬間に単位インパルスの外力
（時間幅は無限小であるが積分すると1になる外力）が加わった後, 
外力が全く加わらなかった時の解である. 
この単位インパルス応答関数を図3 に示す. 
力が直接加わる$z=0$では, 
力が加わった直後の応答が最も大きく, 
以後$t^{-1/2}$で小さくなっていく. 
ここで, $t^{-1/2}$で減衰するというのは, 
指数関数的に減衰するのに比べて非常に時間がかかり, 
特徴的な時間スケールがない, 
ということに注意していただきたい. 
一方, 内部の点$z\not=0$では
力が加わった瞬間には全く応答せず, 
時間がたつにつれて$z=0$の解に漸近する. 
つまり
\begin{screen}
\Be
\item 外力が加わった場所で, その影響がなくなるには
      かなり時間がかかる. 
\item 外力が拡散(粘性)により離れたところに伝わるには時間がかかる. 
\Ee
\end{screen}\noindent
ということになる. もちろん 1 は 2 の裏返しである. 
拡散に関しては我々はかなりの経験があるので, 
当り前のことに聞こえるかもしれないが, 
その当り前のことが\.ち\.ゃ\.ん\.と式として表現できる, 
ということが大切なのである. 
方程式(\ref{dif})は線形なので, 
過去に加わった外力の影響を全て積分すれば現在の解(\ref{difs})となる.


一方, 基礎方程式(\ref{eq1}--\ref{eq2}) で $\nu=0$ とすると, 
これも簡単に解けて
\Beq
\Vtwo{u}{v}= \ROTA{ft} \Vtwo{u_0}{v_0}
\Eeq
となる. 
ここで, $u_0$, $v_0$ は初期値である. 
これは慣性振動と呼ばれ, 回転系の自由振動である. 
すなわち, 非回転系では
「物体に外力が働かなければ, その物体は静止または等速直線運動をする
」(ニュートンの第１法則)
のであるが, 回転系では
\begin{screen}
      物体に外力が働かなければ, その物体は静止または
      \underline{周期$2\pi/f$の円運動}をする
\end{screen}\noindent
のである. 
ここで, 周期$2\pi/f$は座標系の回転周期$2\pi/\Omega$の半分である. 
なぜそうなるかを直感的に説明するには, 
もう一つ解説がいるのでここでは省略する. 
とにかく, もしニュートンが地球の自転を常に感じながら生活していたら, 
彼の法則は異なったものになっていたはずなのである. 

さて, このことを念頭において, もう一度, 
基礎方程式(\ref{eq1}--\ref{eq2}) を眺めて見よう. 
これも線形の式であるので, (\ref{dif})式と同様, 
インパルス応答の形で解が書けるはずである. 
インパルス応答関数は, 無限小の時間だけ外力が加わった時の解であるので, 
外力が加わった瞬間にはコリオリの力はほとんど効かず,
拡散方程式と同様に海面にδ関数的な流速分布ができるはずである. 
その後はコリオリの力を受けながら, 
鉛直方向に拡散していくことになるが, 
そのとき外力は一切働かない.
となれば, この式に対するインパルス応答関数は, 
非回転系のインパルス応答関数を周期$2\pi/f$で回転させたものになる,
ということが容易に想像できる. 
式で書けば
\Beqs
\Vtwo{u}{v} &=& 
\int_0^\infty \V{I}(\tau) \Vtwo{F_x(t-\tau)}{F_y(t-\tau)} d\tau 
                                  \label{impulses}\\
\V{I}(t) &\equiv& \ROTA{ft} I(t)  \label{impulsev}
\Eeqs
である.
実際, (\ref{impulsev})式 を(\ref{eq1}--\ref{eq2})式に代入してみると
この式を満たすので, 
想像通り(\ref{impulsev})式がこの系のインパルス応答関数であり, 
(\ref{impulses})式が方程式(\ref{eq1}--\ref{eq2})の解であることがわかる. 
また外力が定常な場合, 
$z=0$で(\ref{impulses})式はFresnel積分となり, 
(\ref{spiral})式の解に一致することが確かめられる.
%（$z=0$ 以外で(\ref{impulses})式が(\ref{spiral})式に一致することを証明するのはかなり難しい）

また, 外力が一定のとき慣性振動の周期$2\pi/f$で回転しながら
この解を眺めてみると, 
この解は周期$2\pi/f$で回転する外力に対する,
拡散方程式の解と同じことになる. 
(１成分だけを考えれば, 
地表面での熱流量が周期的に変化するときの
地面の中の温度分布を求める問題と同じになる.)
従って, (\ref{impulses})式で外力が一定の場合でも, 
ある瞬間に働いた外力による影響は, 
一定時間($\pi/f$)後の外力によって打ち消されてしまうので,
非回転系のように一方的に加速されることはない. 
そして, 境界層の厚さ$D$は「慣性振動の１周期の間に拡散で伝わる距離」
によって決ることになる. 


このように解いてくると, 
\ref{theory}節の疑問に対して少し違った答え方が可能になる. 
すなわち, 
\begin{screen}
1: 海面での流速が風の方向と一致しないのは, 
\Bi
\item 過去に加えられた力により生じた流れが
      時間とともにコリオリの力により回転させられ, 
      その影響が現在まで残っているためである. 
\Ei
2: Ekman\.ら\.せ\.んが右回りになるのは, 
\Bi
\item 海面で加わった力が深い部分に伝わるには時間がかかるので, 
      その間に流れの方向がコリオリの力によって右回りに回転してしまうため
      である.
\Ei
\end{screen}\noindent
ということになる. 
この説明は(\ref{impulses})式を言葉で書きなおしただけであることに注意していただきたい. 
また, 海面での流れの方向を決める上で
「半無限領域での拡散過程には特徴的な時間スケールがない」
ということが重要な意味を持つ. 
もし, 拡散過程に特徴的な時間スケールがあったとすれば, 
その時間スケールとコリオリの力による慣性周期$2\pi/f$との比によって, 
海面での流れの方向が変化するはずだからである. 
実際, 海の深さが有限の場合には
拡散過程に特徴的な時間スケールができるので, 
海面での流れの向きが変わってくる. 
これは海の深さが$D$ に比べて小さい時
(拡散過程の時間スケールが$1/f$に比べて短い時)に顕著になる. 


実は, 上のような物理的な解釈はされていないものの, (\ref{impulses})式
の形式は Ekman の論文に記されている. 
はずかしながら, 
私はごく最近Ekmanのオリジナルの論文のコピーを手に入れて, 
このことに気がついたのであるが,
なぜか以後の海洋物理・気象力学の教科書で, 
インパルス応答の形でEkman層の流れを記述したものはない. 

さて, もう一度(\ref{impulses})式を違った角度から眺めて見よう. 
具体的にEkman層の流速分布を求めたいとき, 
外力が定常な場合には, 
明かに(\ref{spiral})式により計算する方が簡単である. 
外力が非定常な場合は, (\ref{spiral})式が使えないので, 
(\ref{impulses})式を使うメリットがでてくるように思える. 
しかし, (\ref{impulses})式を使っても, 
外力が不規則な変動をする場合には, 
結局数値積分をするしかない. 
それならば元の式(\ref{eq1}--\ref{eq2})を直接積分しても手間はそれほど変わらない. 
むしろ指数関数や三角関数の計算をしなくてもよい分, 
(\ref{eq1}--\ref{eq2})式を直接積分する方が早いかも知れないのである. 

こうしてみると(\ref{impulses})式は実用的にはほとんど意味のない式である. 
それでもなお私は(\ref{impulses})式にこだわる. 
それは, 慣性振動と拡散という基礎的な物理過程を基にして, 
外力がその系に及ぼす影響を素直に表現している式だからである. 
これは単に効率的に方程式を解く, ということとは異質な価値観である. 
もし, 慣性振動と拡散に関する物理的な知識がなかったとしたら, 
なぜインパルス応答関数が(\ref{impulsev})式となるのか理解できず, 
この解法も複雑なだけで意味のないものになってしまうであろう. 
そのような意味で, 
この解法は物理的論理に根ざした解法であると私は思うのである. 

%----------------------------------------------------------------------

\section{終りに}
２年程前, 地球流体力学の発祥の地ともいえるアメリカ東部に滞在した折に, 
「地球流体力学は応用数学か応用物理か? 」 という質問を
地球流体力学を専門とする研究者数人にしたことがある. 
かえってきた答えは\.全\.て「応用数学」 であった. 
この時, 私は学生時代から抱いてきた「割り切れないもの」の正体がわかった気がした. 
もともと地球流体力学は応用数学であったのだ.
従って, 地球流体力学の第一目的は「方程式を解くこと」であり, 
その物理的解釈は二の次であったわけである. 
そう思えば Ekman の論文に記された２つの解析解のうち, 
数学的にエレガントな解だけが引用され, 
物理的解釈がしやすいインパルス応答関数表現が忘れ去られてしまったのもうなずける. 

さて, 現代はコンピュータ時代である.
地球流体力学もコンピュータなしには語れない時代になった. 
方程式(\ref{eq1}--\ref{eq2})くらいの微分方程式ならば, 
パーソナルコンピュータで楽に解ける. 
余談になるが, 私が\ref{phys}節のインパルス応答関数に気がついたのも, 
Ekman層の数値実験をパーソナルコンピュータで行っていたときに, 
誤って初期値以外は風の応力を0にしてしまった
（まさにインパルスになってしまった）のがきっかけであった. 
このように, 誰でも手軽に数値計算が行えるようになった今日, 
もし, 地球流体力学の第一目的が「方程式を解くこと」であるならば, 
その目的は数値計算によってほぼ達成されているといってよい. 
問題は, 計算された結果の物理的な解釈である. 

残念ながら, 我々の物理的洞察力は数学的な式の解法にかなり影響されている. 
このようなことは複雑な数式を扱う流体力学では, 
しばしば経験することであるが, 
応用数学として発達してきた地球流体力学においてはなおさらである. 
となれば, 物理的な解釈をすることを目的としてある問題を解くには, 
最初から方程式の解法に物理的な意味を持たせながら
解いていかなければならない. 
なぜならば, 数学的にもっとも簡単な方法で方程式を解いておいて, 
後から「付焼刃」的な「物理的解釈」をしたところで, 
万人を納得されられるとは思えないからである. 
例えば, (\ref{impulses})式を導くことなしに\ref{phys}節の説明をしても, 
「ほんとかな?」という疑問符をきれいに取り去ることはできないであろう. 
「解そのもの」の正しさは実験や観測によって証明することが可能である. 
しかし, その「物理的な解釈」が正しいかどうかは, 
解を求める過程でその物理的な論理を追うことができなかったら, 
ほとんど証明不可能なのである. 
これは, ナビエストークスの方程式を直接積分する数値実験にもいえることである. 

このように現在の地球流体力学は, 
計算機の発達によって大きな転換期にさしかかっていると私は考える. 
しかしながら, これまで数学的に解くことを第一目的としてきた体系を, 
物理的に理解しやすい体系に組変えることは, 
ほとんど最初からその体系を作りなおすのに等しいかもしれない.
そして, 物理的に理解しやすい体系は, 
数学的にはかえって扱いにくいものになるかもしれない. 
これまで解析的にもっとも扱いやすい形で問題を扱ってきたにもかかわらず,
地球流体力学の問題はかなり複雑である. 
それを, 物理的な解釈を優先させて問題を扱えば, 
解を初等関数で表わすことはできず, 
最終的には計算機の力を借りるしか手がなくなる可能性が高い. 
しかも, 
それは素直に数値実験をするよりも手間がかかるかもしれないのである. 
しかし, それでもよいではないか. 
我々は世界中で最も恵まれた計算機環境の中にいるのだから. 
そして, 我々の最終的な目的は「初等関数で解を表わす」ことではないのだから.
\newpage

\TITLE{REFERENCE}
\REF
1)東海大学海洋研究所: 水産庁委託研究集積機構調査研究報告書(1988)
\REF
2)V.W.Ekman: On the Influence of the Earth's Rotation on Ocean-Currents,
Arkiv. Mat. Astr. Fys. Bd 2. No.11 (1905)
\REF
3)M.W.Stacey, S.Pond, P.H.LeBlond: 
A Wind-Forced Ekman Spiral as a Good Statistical Fit to Low-Frequency
Currents in a Coastal Strait.
{\it SCIENCE} (1986), Vol.233 p.470-472.
\REF
4)細山田得三, 金子新:
超音波ドップラー流速プロファイラーによる吹送流の計測.
第35回海岸工学講演会論文集 (1989), p.40-44
\REF
5)石井春雄, 道田豊, 西田英男:
音波ログ速流結果に見られた表層エクマン層について,
1985年度 日本海洋学会春季大会 講演要旨集, p.121-122

\TITLE{図と写真の説明}
\Bd
\item[図１:] $F_x=0$, $F_y=\sqrt{2}\rho\nu/D$ の時のEkman\.ら\.せ\.ん.
          (a) は上から見た流速分布で, $z=\frac{n\pi}{8}D$ 
          $(n=0,1,2,\cdots)$のところに矢印が描いてある. 
          (b) は横($x$軸方向)から見た流速分布である. 
\item[図２:] 実験装置の上面図(a)と側面図(b). 
          中央部が水槽で縦横30cm, 深さ10cmである. 
          A:送風機, B:電磁ソレノイド, C:注射器, 
          D:射出パイプ, E:整流羽根.
\item[図３:] 式(\ref{dif})の単位インパルス応答関数(\ref{difi}).  
          実線は$z=1$, 破線は$z=1$, 点線は$z=2$での時間変化をあらわす. 
\item[写真１:] Ekman\.ら\.せ\.んを上から撮影したもの.
          風は左から右に吹いている. 
          斜めの白い線は色水を射出するためのパイプである. 
\item[写真２:] Ekman\.ら\.せ\.んを横から撮影したもの. 
          風は左から右に吹いている. 
          上部の黒い縦線が射出パイプである. 
          鏡を使って撮影したものを, 左右逆に焼き付けた. 

\Ed
\end{document}
