—————————————————————————————————— = 海洋モデルミーティングログ(2015/12/08) == 参加者(敬称略) * 林, 竹広, 高橋, 石渡, 河合 == 進捗状況の報告(河合) === 結合モデルによる数値実験時に見つかった問題に対する対処 * 塩分の半球非対称な分布についてのデバッグ * はじめに * 前回の結果から示唆されたこと * 低緯度の降水分布が半球非対称であることと, 直接関係しているように見える. * なぜ低緯度域の降水分布が半球非対称になるのか? * 今の海洋混合層の取り扱い方(対流調節でしか混ざらない)では, 低緯度域の海洋 の混合層の熱慣性が小さすぎることが問題ではないだろうか. * 混合層の熱慣性が小さすぎると, 何が起こると考えられるか? * 降水域(大気子午面循環の上昇域)では潜熱フラックスが小さくなった結果, SST が 高くなる傾向(乾燥域では逆の傾向)があるとみられるが, 熱慣性が小さいとその効果が 顕著に現れる. そして, SST 分布と対応して大気子午面循環の上昇域下降域が固定 されるとなかなか戻れない. * 一方, 熱慣性が大きい場合は, SST の応答が鈍く, 大気子午面循環の上昇域下降域の固定化が 起こりにくいように思われる. * 対処 * 海洋モデルの混合層パラメタリゼーションには様々な方法が存在するが, ここでは Goosse et al.(1998) に習って, 海面近くで大きな鉛直拡散係数を陽に指定する方法(簡単な混合層の取り扱い方の一つ)を用いた. * 混合層の厚さを 50 m と仮定し, その中では鉛直拡散係数の値を 2x10^-3 [m^2/s] にとる. * 海面混合層の鉛直混合を改良した効果の検証 * やったこと * 結合系を 5 年程度走らせて, 低緯度の降水量分布, 海面温度, 表層の塩分分布を, 改良前と改良後で比較した. * 分かったこと * 期待したように, 改良後の低緯度の降水量は半球対称的となり, 塩分は半球対称的に時間発展するようになった. * 時間積分法の再考 * これまで, 結合系の時間積分を, 結合 run を 180 日, 海洋海氷モデル単体 run を 10 年を交互に繰り返す ことで行ってきたが, 海面温度と降水量の変動の時間スケールに対して結合 run の 180 日は短かすぎる ようである. * 結合 run を 5 年, 海洋海氷モデル単体 run を 50 年に変更した. === パラメータ実験に向けた準備 * 大気海洋海氷結合モデル(上記の時間積分のための処理も含めて)を AICS の共用クラスター(HP Proliant SL390s G7 2U) 上で動くようにした. * 計算時間が短縮され(今使える PC 環境の 1/3 ~ 1/4 程度で時間で数値実験を完了できる), また リーソスが空いていれば同時に複数の実験ケースを行えるようになった. * FX10 と比べコードの修正をほとんど行わずに計算時間を短縮できた. === 大気・海洋海氷結合モデルによる水惑星実験 * 大気海洋海氷結合モデルによる水惑星実験を実施する中で, 結合モデルのデバックを行っている. * 実験設定 * 系の設定 * 水惑星設定, 海底地形なし(水深 5.2 km) * 太陽定数, 惑星半径, 自転角速度は現在地球と同じ値. * 離心率, 自転傾斜角はゼロ * モデル * 大気モデル(DCPAM, 3D 設定) * 解像度: T21L26 * 力学過程 * プリミティブ方程式 * 物理過程      * 放射: 地球用放射 (Chou et al 1998; Chou et al, 2001) * 積雲パラメタリゼーション: Relaxed Arakawa Schubert * 地表面フラックス: バルク式(Beljaars and Holtslag, 1991) * 鉛直乱流混合: Mellor and Yamada 2.5 次 * 大規模凝結 (Manabe et al., 1965) * 海洋モデル(軸対称設定) * 解像度: Pl42L60 * 力学過程 * ブジネスクプリミティブ方程式 * 物理過程 * メソスケール渦による混合(Gent and McWilliams, 1990) * 対流調節(Marotzke, 1991) * 海氷モデル * 3 層熱力学モデル(Winton, 2000) * 初期条件 * 大気: 温度一様, 静止状態 * 海洋: 温位, 塩分一様, 静止状態 * その他 * 時間積分 * 時間スッテプは, 大気 0.5 hour, 海洋 4 hour * 結合モデル run は 5 年, 海洋海氷モデル単体 run は 50 年積分する. * フラックス交換は 4 hour ごと. * 日射は日平均したものを与える. * 海面混合層の鉛直混合や時間積分法の改良を踏まえて, 結合系による水惑星実験を再び行った. * おおよそ大気 50 年, 海洋 500 年間時間積分したが, これまでのように塩分分布に極端な半球非対称な構造が現れる ことはなくなった. * 気になったこと * 大気上端の放射収支がなかなかあってこない. * 最後の結合 run でも依然として, 大気上端の外向き長波放射量は, 内向き短波放射量に比べて 35 [W/m2] ほど小さい. * 海氷の厚さやその上の積雪量が水平方向に大きく振動する. * 太陽定数依存性の調査に向けて, 太陽定数増減実験を試験的に行った. * 今回は, 太陽定数として 1200, 1366, 1500 [W/m2] を使って計算してみた. * いずれも大気 50 年, 海洋 500 年間の積分を, 準備したクラスター環境にて行ってみた. * 計算時間は 2 日弱 (3ノード占有(計 36 cores)) * 途中で計算が破綻することはないが, 1200, 1500 [W/m2] の場合でも, 上記の問題(エネルギー収支, 海氷と関係する場の水平振動)が やはり計算結果に見られた. * TODO * 大気上端のエネルギー収支が大きくずれている理由を考える. * 積分時間が全然足りていないのか? * モデル自体(特に海洋モデル)のエネルギーの保存性はどの程度か? * 大気海洋海氷間でフラックス交換する際に, 時間方向のずれが, この問題にどの程度効いているか? * 海氷厚さ・積雪量が水平方向に振動する理由を考える. * 安直には, 海氷の厚さの時間発展に水平拡散を入れると良さそうだが, その前に海洋からの熱フラックス の水平分布を見て状況を確認する. * 上述の問題を解決し, もう一度結合モデルの長時間積分を行う. * 計算結果の解析と Web ページへのまとめ作業を続ける. === 全体的な TODO * 大気海洋氷結合モデルによる水惑星実験の最近の研究の調査 * 海洋海氷モデル, 結合モデルの開発に関して後回しにしていること * 海氷の厚さの拡散の導入 * 海氷の力学を第一次近似で表現したことになる. * 部分氷の導入 * rigid lid 近似の排除と自由表面(線形)の導入(Marshall et al., 1997) * フラックス交換時に用いるエネルギー保存を満たす補間法の導入 == 次回予定日 * 01/20(水) 12:30 から