= 海洋モデルミーティングログ(2015/03/17) == 参加者(敬称略) * 林, 中島, 竹広, 高橋, 石渡, 河合 == 進捗状況の報告(河合) === Hu and Yang(2014) の紹介 * あらすじ * 大気海洋氷結合モデルを用いて, 海洋海氷の運動を考慮した同期回転惑星の気候計算を行った. * 海洋の熱輸送と海氷の過程は, M 型矮星周りの HZ 内にある同期回転惑星の気候やハビタビリティに どのような影響を与えるのかを調べた. * 主な結果 * [A] 標準実験の結果 * 海洋海氷の力学を考慮した場合: 「ロブスター状」の開氷域ができる. * 海洋海氷の力学を考慮しない場合: 昼半球に「目玉状」の開氷域ができる. * [B] 高 CO2 濃度 (200,000 ppmv) 実験の結果 * 海洋海氷の力学を考慮した場合: 全球の氷が消失する * 海洋海氷の力学を考慮しない場合: 氷は消失しない. 標準実験とほぼ同様のの開氷域ができる. * [C] 恒星フラックスの依存性 * 海氷海氷の力学を考慮した場合は, 考慮しない場合よりも大きな恒星フラックスで全球凍結解に, より小さな恒星フラックスで全球氷なし解に至る. * Hu and Yang の計算結果の考察, 議論 * [A], [B] の計算結果は, 赤道付近の強い東向きの海流に伴う, 昼半球から夜半球への効率的な熱輸送を示唆する. * 実際, 大気・海洋熱輸送を調べると, 十分に大きな CO2 濃度や恒星フラックスに対して, 東西方向の海洋熱輸送が 顕著となる(約 2 PW). * [C] の計算結果は, 海洋・海氷の力学の考慮によって, HZ が狭くなることを示唆する. * 例えば, HZ の内側境界はもとの位置より約 2 割外側となる. === 水惑星設定における海洋大循環の数値実験 * 今まで行ってきた密度一様風成循環計算よりも, より Marshall et al.(2007) に近い設定で行う. * 具体的には以下のことを行う. * 密度一様, 軸対称の仮定を外す * 中規模渦, 対流のパラメタリゼーション, 海氷モデルの導入 * 実験シリーズ * [A] GM スキーム, 対流調節スキームの両方を使わない場合 * 標準実験(EOS に UNESCO を使う) * EOS 依存性 * 鉛直拡散係数依存性 * [B] 対流調節スキームを使う場合 * 標準実験(EOS に UNESCO を使う) * EOS 依存性 * [C] GM スキームを使う場合 * 標準実験(EOS に UNESCO を使う) * EOS 依存性 * [D] 等密度面混合, GM スキーム, 対流調節スキームを使う場合 (<-- 今回新たに行った数値実験) * 標準実験(EOS に UNESCO を使う) * EOS 依存性 * 計算結果 * [A] - [D] の結果のまとめは, 2015-02-18 のログを参照. * 実験 [D] と M07 の計算結果と異なる点についてのデバッグ * 特徴の異なっていた点 * 子午面循環 * M07 の約 2 倍 * 原因 * 子午面循環の流線関数を計算するルーチンにバグがあった(cos の掛け忘れ). * 修正により M07 と同程度の循環強度になった. * 高緯度域の表層部の温度, 塩分の鉛直構造 * 平衡状態において, 本計算では緯度 60 度より高緯度では鉛直一様化するが, M07 は海面から水深 300 m まで の間は鉛直勾配が存在する. * 海氷による風応力の遮蔽効果を考慮していないためか?(要調査) * 海氷末端(~緯度 55 度)近傍の混合層(海面から水深 75 m)の構造 * M07 では温位塩分の等値線が極側へと沈み込むような分布をしているが, 本計算では対流調節により垂直に立っている. * 対流調節が頻繁に起こりすぎているためか?(要調査) * 上の問題の検証 * 海氷による風応力の遮蔽効果を考慮した実験 * 緯度 60 度から極までの風応力をゼロにした. * しかし, 平衡状態における温位塩分分布に大きな違いは現れなかった. * 対流調節なし(実験[C])とあり(実験D)の比較 * 対流調節なしの場合 * 海氷末端の混合層において温位塩分の等値線が極側へと沈み込むような特徴が現れた * 対流調節ありの場合における, 等密度面混合に伴う舌状の深部への低塩分の供給が見られなくなった * M07 の温位・塩分分布は, 実験[C]と[D]の間ぐらいの特徴をしているように思える. * 実装した対流調節を再チェックする. * TODO * 追加の数値実験を行う. * (余裕があれば)遅い対流調節を用いた場合 * 熱フラックスの出力 * 密度非一様設定における循環場の構造の理解 * 順圧成分に対する運動方程式を書き, その構造について考える. === 海洋モデルに新たに実装したもの * 時間離散化においてコリオリ項を陰的にも扱えるようにした. * 慣性振動に伴う時間ステップの制約を緩和できる. * 上の軸対称風成循環実験の中で検証を行った * 水平格子幅約 200 km では, 時間ステップを今までの約 8 倍に取れるようになった. * コリオリ項の陰的な評価による減衰の効果は, 0(10^3) 日より時間スケールの長い過程には ほとんど影響がないことを示した. * 鉛直拡散項において, 拡散係数が空間依存の場合も取り扱えるようにした. * vertical enhanced diffusion(遅い対流調節)や Richardson 数に依存した鉛直拡散(Pacanowski and Philander,1981) などを導入できるようになる. * テストなどはこれから. === 対流調節スキームの調査と導入 * TODO *「瞬間的な」対流調節の定式化の修正 *「遅い」対流調節の計算結果とそれと等価な拡散方程式の数値解の比較をノートに追加する. * 対流調節前後で, 温位, 塩分の鉛直コラム内での保存性を確認 === 中規模渦パラメタリゼーション(Redi スキーム, GM スキーム) * TODO * GM スキームの解釈図を, 簡単な関形数を考えて描いてみる. === 全体的な TODO * 大気海洋氷結合モデルによる水惑星実験の最近の研究の調査 * AGCM との結合に向けた, カップッラーの調査 == 次回予定日 - 4/15(水) 15:00 から