%題名  金星現象論  金星の雲
%履歴  90/05/04  野村竜一
%      92/08/06  林祥介
%      96/07/22  高木征弘       地球流体電能倶楽部資源「金星現象論」へ
%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
\documentstyle[a4j,12pt,ascmac,twoside,dennou,Depspic]{jarticle}

\Dtitle{金星現象論: 金星の雲}
\Dauthor{地球流体電脳倶楽部}
\Ddate[96/07/22]{1996 年 7 月 22 日}
\Dpath{/riron/genshou/venus/cloud/}

\begin{document}
\maketitle

%\pagenumbering{roman}
\tableofcontents
%\clearpage
%\pagenumbering{arabic}

\begin{abstract}
  金星の雲について. 
\end{abstract}
\newpage
%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
\Dchapterhead

ここでは,金星に関するトピックスとして,雲について述べる.

\section{観測方法}

       \subsection{雲の存在を確認する方法}
             \begin{itemize}
             \item 可視域でみる.
             
                   望遠鏡を使って可視域で金星を見ると,
                   一面が雲におおわれているのがわかる.
             \item 紫外線域でみる.
             
                   紫外線域で金星を見ると,
                   金星には模様が見える.
                   ただし,これが雲の構造を見ていることになるのか,
                   それともある物質の分布を見ていることになるのか,
                   確実なところはわかっていないらしい.
                         
             \end{itemize}
       \subsection{雲の構成物質を観測する方法}
       
             
             \begin{enumerate}
             \item 直接観測
                   \begin{itemize}
                   \item 比濁分析(nepherometry)
             
                         大気の濁り度を調べる.
                         散乱断面積がわかるらしい.
                         
                   \item 粒径分布測定(particle size spectrometer)
                   
                         雲粒子の粒径分布を測定する.
                   
                   \item 散乱光測定
                   
                         散乱光を光度計で測る.
                   \end{itemize}      
             \item 間接観測
                   \begin{itemize}
                   \item 分光観測
                   
                         吸収線を見る.
                   \item 偏光観測
                   
                         雲で散乱された太陽光の偏光度
                         を測る.これにより屈折率が求まり,
                         さらに散乱物質がわかる.
                         金星の雲の主成分が
                         硫酸であることを突き止めた方法である.
                   
                   \item 赤外放射観測      
                   
                         雲層の温度がわかる.
                               
                   \end{itemize}
             \end{enumerate}

       
\section{雲層の分類}

       着陸船による高度別の消散係数,
       粒径分布観測などから,
       金星の雲は3 つの層にわけられ,
       雲の上と下には 霞(haze)の層が存在することがわかった.
       以下それぞれの層の特徴を述べる.
       
       \subsection{粒径分布}
       
             \begin{enumerate}
             \item モ−ド
             
                   雲層中の粒子の大きさの分布はおおよそ
                   3 つのモ−ドに展開できるとされている.
                   ここでは具体的なモ−ドの関数形は出さない.
                   粒径 r の範囲のみ示しておく.
                   \begin{itemize}
                   \item モ−ド1  
                   
                         ${\rm r}=0.1\sim1.2\mu{\rm m}$ 
                   \item モ−ド2  
                   
                         ${\rm r}=0.8\sim2.1\mu{\rm m}$
                   \item モ−ド3  
                   
                         ${\rm r}=2\sim30\mu{\rm m}$
                   \end{itemize}
                   粒径の大きいモ−ドに大きい番号がついている.
             \item 各雲層とモ−ドの関係
             
                   図 1 は各モ−ドの鉛直分布である.
                   各層の特徴を以下に述べる.
                   \begin{itemize}
                   \item 上層雲(57 km$\sim65$km)
                   
                         上層域における第 1 の特徴は モ−ド 3
                         が存在しないことである.
                         モ−ド2, モ−ド3 は同じような分布をしている.
                   \item 中層雲(50 km$\sim57$km)
                   
                         モ−ド 3 が存在する.
                         モ−ド 1, 2 は ともに同じような分布をしているが,
                         上,下層 に比べて小さくなっている.
                         
                   \item 下層雲(48 km$\sim50$ km)
                   
                         中層に比べて,モ−ド3 が大きくなる.
                         モ−ド 1,2 も中層に比べて大きい.
                         
                   \item 霞層(48 km 以下\footnotemark[1])
                   
                         モ−ド 1 しか存在しない.
                         \footnotetext[1]
                         {霞層と呼ばれる層は雲層の上(65 km 以上)
                         にも存在するが,図 1 のデ−タは 
                         雲の下の霞層についてしかないので,
                         雲の下の霞層に話を限った.}
                   \end{itemize}
             \end{enumerate}
\begin{center}
\Depsf[120mm]{fig-prohibited/cloud-1.ps}
\end{center}
\begin{quote}
       図 1. 各モ−ドの高度分布.
       デ−タは パイオニア・ヴィ−ナスの LCPS \footnotemark[2]
       による.
       モ−ド1については粒径が 0.6 $\mu$m 以上
       に限ったものについても
       表してある
       (Esposito et al. 1983.
       ただし 原図はKnollenberg and Hunten 1980).
             \footnotetext[2]{\underline{L}arge-probe \underline{C}loud
                          \underline{P}article size \underline{S}pectrometer}
\end{quote}
\newpage
       \subsection{数密度,消散係数,密度分布}
             
             図 2 は,
             パイオニア・ヴィ−ナスの粒形分布測定器
             (LCPS; 3 ペ−ジ 注2)
             のデ−タをもとにして得られた
             数密度,消散係数,密度分布のグラフである.
             \begin{itemize}
             \item 三つの物理量とも下層雲の領域で
                   最大値をとっている.
             \item 消散係数,密度分布は上層雲から
                   下層雲にいたるまで
                   ほぼ単調増加している中で
                   数密度だけは中層雲において
                   上,下層雲域より小さくなっている.
             \end{itemize}


\begin{center}
\Depsf[140mm]{fig-prohibited/cloud-2.ps}
\end{center}
\begin{quote}
       図 2. 雲粒子の数密度,消散係数,密度 の高度分布.
       左から 数密度,消散係数,密度を表す.
       デ−タは LCPS (3 ペ−ジ 注 1)による.
       T$_{\rm um}$ は 上層雲と中層雲の境目,
       T$_{\rm ml}$ は 中層雲と下層雲の境目を表す
       (Esposito et al., 1983.
       ただし 原図はKnollenberg and Hunten 1980).
\end{quote}

\newpage
\section{金星の雲の組成}


       地球や軌道船からの偏光観測により,
       金星の雲成分に硫酸が含まれることはわかっていた.
       しかし雲で散乱された太陽光の観測からは,
       光学的距離1 程度の高度までの情報しか得られない.
       
       \vspace{5mm}
       大気に突入した探査機によって,
       より多くのデ−タが得られた.
       各モ−ドごとの組成についての情報
       (推測の域を出ないものもある)を以下にあげる.       
       
       \begin{itemize}
       \item モ−ド 1
       
             雲層によって組成が異なる.
             上層雲ではイオウ,下層雲では硫酸といわれている.
       \item モ−ド 2
       
             硫酸の溶液.これはかなり確実らしい.
             リモ−トセンシングで見ていたのはこのモ−ドの粒子である.
             
       \item モ−ド 3      
             
             粒径が大きいので固体
             またはモ−ド2 が成長したものといわれている.
             
             固体としては塩化物, NOHSO$_{4}$
             などがあげられているが
             確実ではないらしい.       
       \end{itemize}
       
       
\section{紫外線像}

       金星を紫外線域でみると,
       濃淡がみられる.
       これは 大気の運動の指標とされが,
       実際この濃淡が何を表すのかわからないまま
       使われていた.
       しかし いくつかの実験と観測の結果から,
       この濃淡のくらい部分は,
       SO$_{2}$の$<3200$\AA の吸収によるものであることがわかった.

\newpage
\section{地球の雲との比較}

       Esposito et al., 1983 による
       地球,金星の雲の比較表を下にあげる.
       
       \begin{table}[h]
       \begin{tabular}{|l|c|c|} \hline
       項目               & 地球       &  金星  \\ \hline \hline
       表面を覆う割合(\%) &  40        &  100   \\ \hline
       平均光学的厚さ     &  5-7       & 25-40  \\ \hline
       最大光学的厚さ     & 300-400    & 40     \\ \hline
       組成               & H$_{2}$O(固体,液体)
                                       & 硫酸粒子,etc.
                                                \\ \hline
       数密度 (cm$^{-3}$) & 100-1000(液体)
                                       & 50-300(液体) 
                                                \\ \cline{2-3}
                          & 0.1-50 (固体)
                                       & 10-50 (固体)
                                                 \\ \hline
       密度 (g/cm$^{3}$)   & 0.3-0.5    & 0.01-0.02 \\ \hline
       最大密度 (g/cm$^{3}$)& 10-20    & 0.1-0.2 \\ \hline
       平均粒径 ($\mu$m)   & 30        &  10     \\ \hline
       主な熱交換過程      & 潜熱      & 放射    \\ \hline
       \multicolumn{3}{l}{表 1. (Esposito et al., 1983)}
       \end{tabular}
       \end{table}
       
       \begin{itemize}
       \item 全球平均の光学的厚さは金星の方が大きい.
       \item 最大の光学的厚さは地球の方が大きい.
       \end{itemize}

%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
%題名  金星現象論  金星の雲
%履歴  90/05/04  野村竜一
%      92/08/06  林祥介
%firstname,*.*.,年:題名.雑誌名.,vol(太字(\bf)),ページ-ペ−ジ.
% 1983 ``{\em VENUS}'', 1-10, the university of Arizona presss. 

\section{参考文献}
\begin{description}

       \item Esposito, L. W., et al., 1983:
             Cloud and hazes.
             ``{\em VENUS}'', 484-564,
              the university of Arizona press. 
       \item 川端潔 1987:
             惑星大気内エアロゾルのリモ−トセンシング.
             気象研究ノ−ト第 155 号, 1-34,
             日本気象学会.
       \item Knollenberg, R. G., and D. M. Hunten, 1980:
             Microphysics of the clouds of Venus;
             Results of the Pioneer Venus 
             particle size spectrometer experiment.
             {\em J. Geophys. Res}, {\bf 85}, 8039-8058.
       \item Moroz, V. I., 1981:
             The atmosphere of venus.
             {\em Space Sci. Rev.}, {\bf 29}, 3-127.
       
\end{description}

%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
{\Large \bf 謝辞}
\vspace{1em}

本稿は 1989 年から 1993 年に東京大学地球惑星物理学科で行われていた, 
流体理論セミナーでのセミナーノートがもとになっている. 
原作版は野村竜一による「金星現象論」 (90/05/04) であり,
高木征弘によって地球流体電脳倶楽部版「金星現象論」
として書き直された (96/07/22).
構成とデバッグに協力してくれたセミナー参加者のすべてにも
感謝しなければならない.

\end{document}
