%表題  2001年春季気象学会予稿
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%履歴  2000/02/11 杉山耕一朗
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\begin{document}

\twocolumn[
   \begin{center}
    {\LARGE {\bf 木星型惑星大気の熱力学計算}}

    \vspace{7mm}
    {\bf 
        $^*$杉山 耕一朗 (北大$\cdot$理),
	    小高 正嗣 (東大$\cdot$数理),
	    倉本 圭 (北大$\cdot$理),
            林 祥介 (北大$\cdot$理)
     \vspace{3mm} }
  \end{center}
  ]


{\noindent \bf 1. はじめに}

木星型惑星の大気対流シミュレーションを行うためには, 大気の断熱温度減率と
凝結物質の鉛直分布とを把握することが重要である. 過去の木星型惑星大気の断
熱温度減率と凝結物質の鉛直分布を計算した例として Atreya and Romani
(1985) がある.
%
彼らは熱力学関数 $S$ の保存式を理想気体の状態方程式と
潜熱・反応熱を用いて熱力学変数 $T$, $p$, n$_{i}$ の式
として定式化した. 
%
この定式化では空気塊において生じうる全ての化学反応を知る必要がある. 
しかし木星型惑星大気における化学反応の全容は明らかになっていない. 
組成の違う大気を考える場合には, 生じうる化学反応が変わるので, 
数値コードを書き換えねばならない. 
そもそも平衡状態を仮定しているので, 化学反応に関する情報がなくとも
断熱温度減率と凝結物質の鉛直分布は計算できるはずである. 

そこで本研究では大気中で生じる反応式を考えずに済み, 
さらに大気組成を簡単に変更することのできる熱力学計算手法を検討する. 
そしてその手法を用いて大気の断熱温度減率と凝縮物質の鉛直分布
を計算する. 


\vspace{1mm} 
{\noindent \bf 2. 計算手法}

{\bf (1)大気の平衡状態の記述}: 熱力学変数として温度 $T$, 圧力 
$p$, 物質存在量 $n_{i}$ を選択する. このとき大気の状態を
与える適切な熱力学関数は $S$ ではなく $G$ である. 
大気の平衡状態は, 熱力学関数 $G$ が最小化された状態であるとする. 
温度・圧力を与えると, 熱力学関数 $G$ は,
\vspace{-2mm} 
\begin{eqnarray}
G = \sum \mu_{i} n_{i},
\nonumber
\end{eqnarray}
と書ける. ここで $\mu_{i}$ は化学ポテンシャルである. 
上式より熱力学関数 $G$ の最小値は, 
物質存在量 $n_{i}$ をパラメータとして変化させることによって
求めることができる. 
大気の状態を熱力学関数 $G$ によって記述したので, 
潜熱・反応熱の代わりに化学ポテンシャル $\mu_{i}$ のリストを
与えればよい. 化学ポテンシャルは既存の物性データから
求めることができる. 

{\bf (2)大気の断熱変化の記述}: 大気の断熱変化は熱力学関数$S$ 
の保存として記述することができる. 熱力学関数 $S$ は $G$ を用いて
以下のように与えられる. 
\vspace{-2mm} 
\begin{eqnarray}
\left( \DP{G}{T} \right)_{p, n_{i}} = -S.
\nonumber
\end{eqnarray}
温度・圧力空間で $dS = 0$ の曲線の通る軌跡を順にたどれば, 
断熱温度減率と凝結物質の存在量を求めることができる. 

\vspace{1mm}
{\noindent \bf 3. 計算結果}

大気成分気体やその凝結成分を理想気体/液体/固体/溶液と仮定し, 上記の計算
手法に則って木星大気における凝結物質の鉛直分布を計算した.  大気組成はボ
イジャーの観測結果から予想されるものとし, $p$ = 10 bar, $T$ = 355 K から
計算を始めた.  計算された凝結物質の鉛直分布を\Dfigref{fig:1}に示す.  凝
結物質の種類と各凝結物質量のピーク値の圧力は, Atreya and Romani (1985) 
の結果にほぼ等しい.  したがって本研究によって開発された計算手法を用いる
ことによって, 他の木星型惑星に対しても妥当な断熱温度減率と凝結物質の鉛直
分布が得られると期待される.


\vspace{-5mm}
\begin{figure}[hbt]
\begin{center}
   \Depsf[65mm]{./dcl-355-2.epsi}
\end{center}
\vspace{-5mm}
\caption{{\small 
         木星大気の凝結物質の鉛直分布. 
         横軸はモル分率, 縦軸は圧力.
         実線は H$_2$O(s), 点線は NH$_4$SH(s), 破線は NH$_3$(s).}}
\Dfiglab{fig:1}
\end{figure}


\vspace{1mm}
{\noindent \bf 4. 参考文献}

{\small 
Atreya, S.K., Romani, P.N., 1985: 
In: Hunt. G.E. (Ed.), Planetary Meteorology. 
Cambridge University Press, pp. 17--68. 


}


\end{document}
