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惑星の気象学


地球: 水惑星の大気

図1: 気象衛星「ひまわり」によって撮影された赤外画像. 1998 から 1999 までの季節変化. 左上から右下へ順に春(4月), 夏(7月), 秋(10月), 冬(1月). それぞれ時刻は日本時間午前 9:00 である. 南半球の黒い部分はオーストラリア大陸. 画像をクリックすると各月 1 ヵ月間の 1 日毎の動画が再生される [元画像は 地球流体電脳倶楽部 気象衛星画像コレクション より取得].

地球は「水惑星」である. 表面の 7 割は液体の水からなる海洋に覆われ, 大気中に存在する水蒸気は大気の鉛直運動にともない凝結し, 雲を形成する. 凝結にともなう潜熱加熱は大気の温度・循環構造に大きな影響を与えている. 火星, 金星の大気に水がほとんどないこととは対照的である (表3).

図 1 は気象衛星「ひまわり」によって撮影された赤外画像である. 画像中の白く写る部分は雲を表している. この画像からわかることをいくつか挙げてみよう.

  1. 中高緯度では西風, 赤道付近では東風:
    画像の上 1/4 と下 1/4 の領域では雲が西から東へ流れている. これに対し赤道をはさむ領域では雲が東から西へ流れている.

  2. 雲の様子が中高緯度と赤道付近で異なる:
    中高緯度では渦状の雲, 赤道付近ではブロック状の雲が見られる. 形の違いは大気の流れ場のパターンの違いを反映している. 赤道付近の雲の方が中高緯度の雲より白く見えるのは, 雲頂高度が異なる (熱帯の雲の方が背が高い) ためである.

  3. そこそこ晴れている:
    画像が真っ白になるほど表面が雲に覆われることはない. ある場所には雲があり, 別の場所では晴れている. 観測される雲量の全球平均値はおよそ 5, すなわち雲に覆われている領域は地球表面の約半分である.

    そこそこ晴れている様子は別の人工衛星の観測結果にも見られる. 図 2 に熱帯降雨観測衛星 (Tropical Rain Measurement Mission: TRMM) によって観測された熱帯の降水強度分布を示す. この図からも降水をもたらす雲の分布にはかたよりのあることがわかる.

特徴 1, 2 は 地球が自転していること, 特徴 3 は 水があること がその原因である.

図2: 熱帯降雨観測衛星 (Tropical Rain Measurement Mission: TRMM) によって観測された, 熱帯の降水強度分布 (単位: mm/hour). 1999 年 1 月最初の 10 日間の平均. 画像をクリックすると 1 月から 12 月までの動画が再生される [TRMM Rain Date Set CD-ROM (ESRDC-007) より抜粋].


最終更新日: 2002/08/20 小高 正嗣 (odakker@gfd-dennou.org)
Copyright © 2002- ODAKA Masatsugu
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