科学英語メモ (新版|作成途中)

Contents

1  句読法

1.0  参考文献

句読法については、以下の文献を参考にしている。これら以外で参考にしたものはその都度、記述する。

  1. NASA SP-7084 1998 ハンドブックに学ぶテクニカルライティング, メアリ・K・マカスキル (片岡秀樹 訳・解説), 京都大学学術出版会, 2009
  2. The Manual of Scientific Style—A Guide for Authors, Editors, and Researchers, H. Rabinowitz and S. Vogel, Academic Press, 2009
  3. 英語の句読法辞典, 稲森洋輔(著) 畑中孝實(監修), インターワークス出版, 2003
  4. マスターしておきたい技術英語の基本, リチャード・カウェル 余錦華, コロナ社, 2006

1.1  ピリオド (Period)

ピリオド (.) は分離の記号。その主な機能は「独立した考えを分離する」こと。

ピリオドは分が主語と述部で完全に完了した後でのみ、使われる。 見出しや箇条書きの項目などで完全な独立文でないものにはつけない。 (箇条書きでも独立文になってる場合はつける。)

ピリオドの後にはスペースを1つ入れる。(かつてはピリオドの後はスペース2つ入れていたが、最近のワープロソフトは自動で調節してくれる)
ただし、頭字語やラテン語由来の略語の間につくピリオドのあとにはスペースをいれない。例:U.S.A., i.e.

LATEXだと小文字の後ろについたピリオドのあとのスペースは、広めにスペースになり、 大文字の後ろについたピリオドのあとのスペースは通常のワード間の広さのスペースになる。 よって、et al. のあとのスペースは広くとられてしまうので、et al.~として 字間を調節する。同様に文末が大文字の場合は、...is called NASA\null. とする。

1.2  コンマ (Comma)

コンマ (,) の機能は文の要素を「分離すること」と「囲い込むこと」である。 技術英語では不必要にコンマを付けすぎないように注意したい。

コンマの後にはスペースをひとつ入れる。

1.2.1  分離のコンマ

1.2.2  囲い込みのコンマ

囲い込む対象の前後に付ける。ただし、後ろのコンマは場合によってはピリオドやコロン、セミコロンなどになる。

1.2.3  慣用的用法

1.2.4  他の句読点とコンマの位置

1.2.5  制限的か非制限的か

制限的

非制限的

どちらにもなる

1.3  コロン (Colon)

コロン (:) の機能は「リスト、節、引用文」を分離または導入することである。 コロンのあとに再びコロンを使用することや大文字を使用することは望ましくない。

コロンの前にはスペースを入れず、後にはスペースをひとつ入れる。
表中にコロンを用いる場合も、コロンの前に空白を作ってはならない。

後述の慣用的な用法を除き、コロンは完全な独立文の後のみで使われる。 とくに動詞または前置詞とその直接目的語の間では使ってはならない。

コロンは such as, that is, for example のような慣用的挿入句の後では使用しない。 なぜなら、コロン自体がこれらの慣用的挿入句と同じ役割を有しているから。
誤用例:Microwave instruments are used for remote sensing of environmental variables such as: sea ice, soil moisture, and surface wind speed.
修正例:Microwave instruments are used for remote sensing of environmental variables, such as sea ice, soil moisture, and surface wind speed.
修正例:Microwave instruments are used for remote sensing of environmental variables: sea ice, soil moisture, and surface wind speed.

1.3.1  リストにおけるコロン

1.3.2  節におけるコロン

1.3.3  コロンの慣用的用法

1.3.4  他の句読点とコロンの位置

コロンは丸括弧の後、引用符の後にうつ。
“ theory”: (monkey):

1.4  セミコロン (Semicolon)

セミコロン (;) はコロンよりも弱い結合(強い分離)を表す。

1つの文にすると長すぎ、2つの文にするには内容が密接な場合に用いる。

1.4.1  等位節のセミコロン

1.4.2  説明句と説明説のセミコロン

1.4.3  セミコロンの慣用的用法

1.4.4  他の句読点とセミコロンの位置

セミコロンは丸括弧の後、引用符の後にうつ。

1.5  引用符 (Quotation Marks)

引用符 (“ ”と ‘ ’) は「別の情報源や直接話法から引用された語」や「まわりの文と区別する必要のある語」を囲い込む。 ただし、過度に多用されると、見づらくなる。

通常、二重引用符 (“ ”) を用い、単一引用符 (‘ ’) は二重引用符のなかでのみ用いる。
なお、LaTeX では前側の引用符 (“) は`` (シフト+@キー)で、後ろ側の引用符は (”) '' (シフト+7キー)である。

1.5.1  区別を必要とする語句に使う引用符

文意を明確にするため、本文から区別する必要のある語句を引用符で囲い込む。
これはイタリック体でも代用できる。

1.5.2  他の句読点と引用符の位置

1.6  丸括弧 (Parentheses)

丸括弧 ( ) は非制限的要素あるいは挿入要素を囲い込むためにつかわれる。

左括弧 ( の前にはスペースを入れる。閉じ括弧の後ろにはピリオドやコンマが後ろにある場合を除いて、スペースを入れる。

丸括弧のフォントスタイルは括弧内ではなく、括弧の外のスタイルと合わせる: the pressure (p)

1.7  ハイフン (Hyphen)

ハイフン (-) は語をつなぐ機能がある。ただし、恒久的な複合語は1語になる傾向がある。

なお、ハイフンの前後にスペースは入れない。

1.7.1  分綴のハイフン

行末の単語が途中で切れる場合にハイフンでつなぐ。ただし語は音節間でのみ分けることができるので、勝手に切ってはいけない。
LaTeXだと自動でやってくれる。
分綴に関しては他にも細かな規則があるが、LaTeXは全部自動でやってくれるので、ここには記さない。

1.7.2  接頭辞のハイフン

1.7.3  接尾辞のハイフン

1.7.4  複合語のハイフン

常用複合語のハイフンの有無は辞書で確認しなければならない。

1.8  ダッシュ (Dash)

ダッシュには印刷上 emダッシュ(—)とenダッシュ(–)の2種類がある。emダッシュは文字 M と同じ幅を有し、enダッシュは文字 n と同じ幅を有する。
単にダッシュと言った場合はemダッシュをさす。

ワープロソフトではemダッシュは連続した2つのハイフンで表現され、enダッシュは1つのハイフン(つまり上述のハイフンと同じ)で表される。
LaTeXではemダッシュは連続した3つのハイフン---で、enダッシュが連続した2つのハイフンで--で入力できる。

ダッシュの前後にスペースは入らない。

1.8.1  emダッシュ

ダッシュは文の要素を囲い込むあるいは分離するために使われる。
ダッシュはたまに使えば、効果的だが、多用すると文の明確さを失ってしまう。

囲い込みのダッシュ

囲い込みのコンマと同じ用法で使用することができる。コンマが多用されて読みにくくなる場合に使う。

囲い込みのコンマ、ダッシュ、丸括弧は違いは

分離のダッシュ

文の後で for example, that is, namelyなどで説明や要約等を続ける場合、[〜, that is, ...] < [〜; that is, ...] < [〜—that is, ...] の順で強調の度合いが強くなる。

ダッシュの慣用的用法

1.8.2  enダッシュ

enダッシュは慣用的用法で用いられる。

enダッシュはマイナス記号と同じものである。
ただし LaTeXでは Mathモード内では-でマイナスが出力される。すなわち、Mathモード以外でマイナス記号を 出力するときは--と入力する。

1.9  スラッシュ (Slash)

スラッシュ (/) は分数, 毎を表す以外には and/or のようにスラッシュの使用が標準となっている場合のほかは使用しないほうがよい。 これはスラッシュの意味が厳密に定義されてないからである。

スラッシュの前後にスペースは入れない。

1.10  イタリック体 (Italics)

イタリック体 (italics) には強調する要素を文章から区別するために用いられる。

1.10.1  強調のイタリック

多くの場合はイタリックにして強調するよりも、構文で強調した方がよい。
また、文全体をイタリックにすることは避けるべきである。

1.10.2  専門用語のイタリック

主題であるキーワードや専門用語を定義するのに最初に使用するときには、イタリック体がよく使用される。

1.10.3  差別化のイタリック

その語の意味を表すのでなく、その語自体をあらわすときにイタリックが使用される。

1.10.4  記号のイタリック

省略。

1.10.5  句読点のイタリック

句読点はそれが属する要素の書体にあわせる。
これらの句読点はローマン体
For light amusement he turns to the Principia Mathematica!
How can they be sure that the temperature was in fact rising?
The letters a, b, and c are often invoked as being fundamental.
I had yet to consider the central thesis of Malthus’s Essay: the imperfectibility of humankind.
これらの句読点はイタリック体
The Beatles’ Help! was released long before the heyday of the music video.
I love Eats, ShootsLeaves, but I would have preferred to see “and” in the title rather than the ampersand—which would allow for a serial comma after “Shoots.”

1.11  スペース (Space)

1.12  番外編:日本語横書き文書の句読点

日本語横書きの文書での句読点は

  1. カンマ「,」と まる「。」:文科省基準 (e.g., 検定教科書、日経サイエンス)
  2. カンマ「, 」と ピリオド「. 」:理科系の論文に多い (e.g., 天気、専門書)
  3. てん「、」と まる「。」:マスコミ基準 (e.g., 新聞、雑誌)

の3つの様式が存在する。

上のように書くと、1. の文科省基準が「正式」のような感じを受けるが、実際には政府刊行物でも 基準 3. で 書かれているものがあり、統一されてない。

これらの使われ方に関して調査・考察した 九州大学大型計算機センター・研究開発部の渡部 善隆氏の “横書き句読点の謎” が面白い。

普段、最も目にするのは 基準 3. じゃないかと思う。おそらく、 日本語入力システムのデフォルトが、「てん」と「まる」になってるからじゃなかろうか。

2  冠詞と名詞

冠詞の使い方は、日本語を母語とする者を悩ませることが多い。本節では下記参考文献1をもとに、冠詞の使い方についてまとめる。なお、冠詞と名詞は常にセットであり、冠詞を理解するために、名詞を理解することが不可欠なので、まず名詞についてまとめる。

2.0  参考文献

冠詞と名詞については、以下の文献を参考にしている。これら以外で参考にしたものはその都度、記述する。

  1. 例文詳解 技術英語の冠詞活用入門, 原田豊太郎, 日刊工業新聞社, 2000
  2. 表現のための実線ロイヤル英文法, 綿貫陽 マーク・ピーターセン, 旺文社, 2006
  3. 日本人の英語, マーク・ピーターセン, 岩波新書, 1988
  4. 続 日本人の英語, マーク・ピーターセン, 岩波新書, 1990
  5. 実践 日本人の英語, マーク・ピーターセン, 岩波新書, 2013
  6. 日本人が誤解する英語, マーク・ピーターセン, 光文社, 2010
  7. 英語で書く科学・技術論文, 谷口滋次 飯田孝道 田中敏宏 John D. Cox, 東京化学同人, 1995
  8. 理系研究者のためのアカデミックライティング, ヒラリー・グラスマン-ディール(著) 甲斐基文 小島正樹(訳), 東京図書, 2011

2.1  名詞の分類

日本の学校教育で学ぶ文法では「普通・集合・固有・物質・抽象」の5つに分類するが、これは言葉の意味に基づく独自の分類であって、文法的な分類とは異なる。

また参考文献2では体系的分類として、名詞を「固有」と「共通」(いわゆる普通の名詞)で大きく分け、共通名詞を「可算/不可算」に分け、そのそれぞれを「具象/抽象」に分けている。さらに「可算-具象」名詞は「個体」「集合」と分けている。

冠詞の使い方という観点から有効な分類は、以下の通りである(参考文献1)。

2.2  冠詞の原則

冠詞(a/an, the, 無冠詞φ)は情報を受ける側が認識する(と予想される)意味によって以下のように使い分ける。

  1. 情報を受ける側にとって「不特定(未特定)」「非限定(未限定)」  → a+[C単], φ+[C複], φ+[U]
    このとき情報を送る側が「不特定」「非限定」のつもりか「特定」「限定」のつもりかは問わない。
  2. 情報を受ける側にとって「特定」「限定」    → the+[C単], the+[C複], the+[U]
    このとき情報を送る側にとっても当然「特定」「限定」である。
  3. 情報を受ける側にとって「一般的概念」「非限定」→ a+[C単], φ+[C複], φ+[U] または the+[C単]
    このとき情報を送る側にとっても当然「一般的概念」「非限定」である。

2.3  the がつく特定・限定

以下の場合には「特定」「限定」されているとされ、上記の原則 2.に従い the がつく。

2.4  冠詞の省略

以下の場合、冠詞が省略されることがある。

2.4.1  冠詞の繰り返し

2.4.2  強く特定する形容詞を伴う場合

2.4.3  目的格のof-句

目的格のof-句によって名詞が限定されている場合、本来 the がつくはずだが、名詞が抽象名詞あるいは動名詞のときは the が省略されることが多い。
addition, analysis, anticipation, calculation, characterization, comparison, computation, determination, development, explanation, extraction, generation, hydrolysis, introduction, milling, observation, oxidation, processing, removal, sintering, swelling, synthesis, understanding, use
ただし、以下の基準に当てはまるときは the を省略しない。

2.4.4  イディオムなど慣用による省略

2.4.5  慣習によって無冠詞化したもの

記号リスト・図のキャプション・タイトルでは冠詞を省略する場合がある.

2.5  不規則な冠詞の用法——同格表現

2.5.1  of-句(同格)

2.5.2  that節(同格)

同格のthat節による修飾の場合、that節の内容は読み手にとって初出の事柄なので、かかる名詞に the は不適切なのだが、 名詞によっては the がつくことがおおいものもあり、不規則である。

2.6  冠詞と名詞に関する細かな注意

2.6.1  theの有無で意味/ニュアンスが変わる表現

初出の[C複]にthe——名詞が示すもの全体を表す

ただし、Japanese を指すものが文脈上読み手に分かっている場合(初出でない)は、the Japanese は特定の日本人を指す。

in case of と in the case of
in front of と in the front of
(in) back of と in the back of

2.6.2  冠詞相当語

次の語は冠詞に相当する語であり、同時に冠詞は使わない。

2.6.3  2語の複合名詞

前の名詞が後ろの名詞を修飾する形容詞的な役割をはたす。前の名詞は単数形で記す(常に複数形の名詞は除く)。

3語以上の名詞を並べた複合名詞は好ましくなく、 space-age technology のように形容詞的な役割をはたす語をハイフンでつなぐ方が望ましい。

2.6.4  名詞の単複の使い分け

2.6.5  注意すべき複数形の作り方

2.6.6  所有格の作り方

2.6.7  所有格と of + 名詞

意味上も文法上も同じだが、以下の傾向で選択される。

NASAの本によると、無生物名詞の所有格には -’s も of も使わず、名詞+名詞の2語複合名詞で表すのがよいらしい.

3  英文法の細かな注意

本節では句読法、冠詞と名詞を除いた英文法の細かな注意点をまとめる。
なお基礎的な文法事項は省略する。

3.1  関係代名詞

3.1.1  that が使われる場合

3.2  形容詞


This document was translated from LATEX by HEVEA.