=== GFD オンラインセミナー 第 10 回 * 日時: 2022 年 9 月 13 日 (火) 15:30 - 17:30 * 話題提供者とタイトル 大塚 成徳 (理化学研究所計算科学研究センター) 「トンガの海底火山の噴火に伴うラム波伝播の静止気象衛星画像による可視化」 * 要旨: 大気中のラム波はおよそ300 m/sで伝播する地表面に捕捉された弾性波で、静止した等温大気の場合には水平方向にのみ伝播する。ラム波は火山噴火、地震、隕石、爆発などによる大規模な圧力変動に伴って励起される。最もよく知られた例は1883年のインドネシア・クラカタウ火山の噴火である。 2022年1月15日に発生したトンガのフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の大噴火によりラム波が励起され、地球全体に伝播した。波動伝播は静止気象衛星によって明瞭に観測された。本事象は気象衛星の観測開始以来、最大の規模であるため、調査に値する。よって、本研究では最新世代の静止気象衛星であるひまわり8号のデータを用いてラム波の可視化を試みた。 今回、ひまわり8号の水蒸気バンド(バンド8)を用いた。10分間隔の画像の時間2階微分を取ることで波が明瞭に可視化された。伝播速度は約310 m/sであり、理論と整合的であった。波は1週間にわたって追跡可能で、地球を5周する様子が見られた。一方で、時間微分を取る際の画像の間隔を前の世代の静止気象衛星の撮像間隔である30分にしたところ、ラム波は明瞭には可視化されなかった。衛星画像に見られる信号は日本における地上気圧の観測と整合的であった。 本発表ではOtsuka (2022)に示した結果に加え、本解析手法の他の静止気象衛星への適用についても議論する予定である。 * 参考文献: Otsuka, S., 2022: Visualizing Lamb waves from a volcanic eruption using meteorological satellite Himawari-8. Geophys. Res. Lett., 49, e2022GL098324.