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: 1次元 FCT: SHASTA : 移流方程式の差分解法: FCT : 目次   目次

はじめに

流れの問題を数値的に解く場合, 衝撃波面のような物理量の不連続面, ま たはその急な空間勾配を表現しなければならないことがある. 差分法でこ れを表現する場合には数値拡散と数値的に発生する波を同時に抑える必要 がある. 一般に空間方向に低次の差分スキームを用いると数値拡散が効き すぎてしまい,本来は保存されるべき物理量の空間プロファイルが維持さ れない. 一方高次のスキームを用いると数値的な波が生じ, 正の値しか取 り得ない物理量に負の値が現れる, という問題が発生する.

このような問題を解決するような差分方法はプラズマ物理学の分野におい て比較的以前から研究開発がなされてきた. その代表的な方法がフラック ス修正法(Flux Corrected Transport; 以下 FCT とする)と呼ばれる方法 である. FCTは Boris and Book(1973) によって始めて提案され, 以後 Book et al.(1975), Boris and Book(1976) で拡張発展がなされた. そして Zalesak(1979) によって一般的表現が与えられた. 現在では FCT は通常 Zalesak(1979) で与えられた表現をもって定義されている. 以下 Boris and Book(1973) で提案された FCT を組み込んだ SHASTA と呼ばれ る一次元移流方程式の差分スキームと, Zalesak(1979) で与えられた FCT の一般表現について簡単に解説する.

Book et al.(1975) でも指摘されているが, FCT とは特定の差分ス キームではなくその手続き全般のことである. よっていろいろな差分スキ ームに対して応用できるという特徴を持っている.

なお気象業界における移流方程式の保存的差分スキームは, 移流されるス カラー量に負の値(数値的波)を発生させないようにすることが課題となっ たのに対し, FCT は衝撃波面のような不連続を正確に表現するために開発 されたことに注意してほしい.



odakker 平成18年2月13日